夏に問題行動が多発していた
ロボット教室の小学1年生のA君。

先生への乱暴、
製作ボイコット、
極度の甘え…
先生方も手を焼いていました。

そんな中
「ロボット教室はつまんないから辞めたい」と言い出したので、

お母さんから相談を受けました。

実は、
児童館でも問題行動を指摘されたとのこと。

小学校就学前は穏やかな子で、
乱暴をするような事はなかった。
小学校に入ってから変わってしまった。
お友達が悪いのかしら?

お母さんは
戸惑っていらっしゃいらっしゃいました。

私はカウンセラーではありません。
だから、原因を探る力はありません。

私は、学校の先生と違って
1日中こどもの様子を見てあげることもできません。

1ヵ月に2回90分しかその子に会えません。

だから、話を聞いて、原因を探って、対策を考えて…とはやっていられないのです。

ただ私は
「こどもはみんな天使」と信じています。だから、こどもの問題行動には、こどものせいではない
何か別な原因があると考えます。

それから
その子が天使だと信じて、
手を替え品を替え、
出来ることを全てやりました。
アメとムチも試します。
毎回ラブレターを書きました。

私が出張で授業に出れない時は、
動画を送ってもらいコミュニケーションをとりました。

少し問題行動が治って、
私の気が緩んだ頃
事件が起きます。

発表の訓練の時間、
お友達が私から褒められてご褒美シールをもらいました。
すると、
A君はその子のご褒美シールを奪い取り、
私の前にやって来て、
わざと自分の作ったロボットを投げ落として粉々にしました。

さらに、
友達から奪ったご褒美シールを私に投げつけて
ニヤリとして私の反応を試すのです。

まるで、金八先生の世界です!

私はA君の手を強くつかみ、
廊下に向かって歩きました。

わずか3秒程の中で
私は心の中で葛藤しました。

叱ろうか?
怒ろうか?
脅そうか?
話を聞こうか?
お説教しようか?

廊下に出て2人っきりになり、
A君の目線にしゃがみます。

まだ私は迷っていました。
深く深呼吸をします。

「あのさぁ」
まだ、私は迷っていました。
(今まで、こんなにしてやったのに!)と腹も立ちます。

「A君ってさ」
まだ私は迷っています。

怒られると思っているA君の顔が
こわばります。

次の瞬間
「A君ってさ、
誰も気づかない事を
よーく観察して発表できるよね。
成田さん感心するよ!
どこで気づいたの?…」

A君の顔が緩んできます。
しばらくすると、
恥ずかしそうに自分が見つけた発見の話を始めます。
「へー!すごいねー!
そしたら、次に発見したら成田さんに教えてくれる?」としばらく2人で話をしたら、
A君はスキップをして教室に戻って行きました。

この時の私の行動は、私の人間性からの選択ではなく、神様が私に降りて来たのです。

この日を境に、A君のロボット製作への意欲が格段に上がりました。

そして、年末にまた事件が起こりました。

「冬休み中にロボザウルスを作りたい」と言うのです。

1クラス上の難易度の高い課題です。
内心…
(無理だろうな。挫折して、またロボット嫌い!と言わなきゃいいけど…)と思いながらも、テキストを貸し出しました。

冬休み開け、A君は見事にロボザウルスを作って来ました。

今は「ロボット教室ずーっと辞めないもん♪」とお母さんに言っているそうです。

現在、
A君はカリキュラムよりも先行してロボットを作れる様になったので、
A君の作ったロボットは、授業での見本になっています。

あの廊下で2人になった時、
叱る選択もありました。
友達のご褒美シールを奪い取ったのですから。

私の選択が正しいかは分かりません。もっと良い選択があったかもしれません。

ただ、誰にも正解は分からないなら、最良のことをするしかないのです。

この子の言葉の裏にある心はなんだろう?

私の教室は何のためにあるのだろう?
と自問自答し、迷いながら、
「こどもはみんな天使」を信じて
最良の選択をし続けたいと思います。