今回取り上げる季語は柏落葉で、春の季語となります。
柏はブナ科の植物で栗、クヌギ、椎、樫の木の仲間です。
ブナ科の植物は冬に落葉するブナの木と冬も落葉しない椎、樫などに分かれます。
柏は冬に葉が枯れてしまいますが、落葉はせず枯葉が枝に残った状態で冬を越します。
そして、春に新しい葉が出てくると落葉し始めます。
次の世代の葉が育つまで、前の世代の葉が木を守るということから子孫繁栄の象徴とされ、それが端午の節句に食べられる柏餅の由来とも言われています。
また、代々家を守ることを重んじる武家ではこの柏の葉の習性が好まれ、家紋の図案に多く使われています。
大きな柏の葉は朴の葉ととともに古くから食器として使われ、現在も宮中で神前に供える食物は柏の葉に置かれて捧げられます。
さて、季語としての柏落葉ですが、関連季語として常緑木落葉(ときはぎおちば)という季語があります。
常緑木落葉は緑の葉のまま落葉するので、五月頃に新芽が出ると枝に残っていた枯葉が落ちる柏落葉とは趣がかなり違います。
五月頃といえば時期的には晩春から初夏の季節の変わり目ということもあり、歳時記により春の季語の場合もあり、また夏の季語で掲載されているものもあります。
この季節、木々の緑が徐々に深くまる中で色褪せて茶色になった大きな葉が落ちていくのは、天寿を全うして、堂々たる死に様を見せているように私には思えます。
このような感情を情景に託して詠みことでこの季語を生かした句ができるのではないかと思います。
柏落葉部室に空いた席二つ
(俳句ポスト投句)
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。





