大衆演劇、3つの不足。 | 大衆演劇西高東低ブログ☆川崎大島劇場真夏の夜の夢★

大衆演劇、3つの不足。

大衆演劇は3つの不足があると思う。


ひとつは後継者不足。跡継ぎがいる劇団はまだいい方で、このままだと十年もすればさらに劇団数が減少してしまうかも知れない。


もうひとつは演技ができる役者不足。大衆演劇とはほぼ座長が主役である。あとは副座長が主役の時もあるが、基本的にいい役は座長が務める。ゲストを呼んだ際はゲストに華を持たせることもあるけど、年に一度の誕生日公演とか特別なことがない限り、座長並びに役付きの役者以外が主役に抜擢されることはほぼない。


商業演劇だと学生時代に演劇部だったり、児童劇団上がりだったり、ぺえぺえでもそれなりに演劇経験があることが多い。まあ、演技なんてものは役がついてナンボなので、そこらへんは誤差の範囲内だと思うけど。


大衆演劇の世界は口立てといって普段は台本だとかなく、基本的に習うより慣れよの世界だ。座長の子どもだとか親戚ならばそれなりに目をかけてくれるかも知れないが、なんかの気まぐれでたまたま入り込んだ一般人だったりすると、よほど食らいついて行かないとついて来れない。雑用として使い潰され、いつの間にかドロンしてるのが関の山だろう。


座長と他に2、3人、それなりに立ち振る舞いができれば、大衆演劇の芝居はほぼ完結してしまう。役を増やしたところで、ただ突っ立っているだけで終わりがちだ。舞台もさほど広くはないので、爪痕を残すこともままならず、せいぜい足を引っ張らない程度に大人しくしてるしかなさそうだ。


なので、芝居ができる役者をひとりでも増やすというのは並大抵のことではない。毎日の公演に追われて、育成する時間も余裕もないのだ。


大衆演劇役者養成所なるものは皆無だからね。結局、座長と副座長あたりで抱え込むことになる。頼りになる若座長に花形、後見がいればいい方で、それ以下はそれらしくやるしかなかったりする。特に女優は冷遇されがちなので、女優が育ちにくいという環境だったりもする。


大衆演劇の名女優を上げろと言われても10人も上がるか怪しかったりするし、各劇団に実力派女優と呼ばれるひとが1人でもいれば儲けもんである。下手するとまともな女優がいないことが多い。そうなると、艶っぽい芝居ができなかったりして、股旅物だとか渡世物に偏りがちだったりもする。


大衆演劇の世界で女優を育てることは難しい。ましてや、女座長ともなると数える程しかいない。


女人禁制の歌舞伎はともかく、商業演劇の世界と比べると雲泥の差である。女優はどこの劇団も喉から手が出るほど欲しいはずだが、大体は座長の女になっておしまいだったりするので、ホント育ちにくい。


最後のひとつは脚本不足である。大衆演劇で新作と言っても大半はどこかで聞いたことのある脚本のマイナーチェンジ、焼き増しだったりすることが多く、全くの新作の芝居となると、なかなかお目にかからない。


そもそも新しい芝居を立てようにも、書く時間もなければ、稽古する時間もない。脚本を書くためには読書したり、観劇したり、映画を観たりなどして、そこから着想するのが基本だが、その時間もままならない。歌舞伎や商業演劇みたいに専属の脚本家や演出家などがいればいいが、大衆演劇は全て自分で賄わなければいけない。それは時間的にもかなりキツい。


誕生日公演だとかよほどのことがない限り、新しい芝居など立てたがらない。まだ立てられるだけの余裕があればいい。中堅劇団のように座員が足りてなければ、それも困難だ。


芝居が立てられる劇団は羨望の的だと思う。舞踊ショーの振り付け以上にハードルが高いと思う。


打開策として、脚本を外注するという手もあるが、そんなことできるのはひと握りだと思う。


かといって、同じような芝居ばかりやっていたら飽きられてしまうのは自明の理だ。いくら、同じ芝居でも、配役やその場の空気感によって変わるとは言ってもベースは同じわけで、何度も観ているうちに、客が芝居を選り好みするようになる。


以上のように、後継者、役者育成、脚本という三本柱が不足しているというのが大衆演劇の実情である。


どれも一朝一夕でどうにか解決できるものではないし、変化を待たせるためにゲストでお茶を濁したりしがちだ。そうなると、さらに休みが削られて、リフレッシュできない。


日々の公演をこなしながら、後継者を育てて、演技指導もして、脚本を立てて、稽古までするとなると、どう考えても無理がある。


劇場や劇団を増やせばなんとかなる話ではないのだ。ネットでバズれば人気がでるわけでもない。もっと、根本的な問題があると思う。


ちなみに、演劇に関していうと、社会人になって就職もしないで役者になるなんてごくひと握りの変態くらいしかいない。


中高演劇部で、大学でも演劇をやっていたというガチ勢の9割は就職してしまう。


お笑いサークルとか演劇サークル出身というと、就活で人事のウケもいいらしく、そのためにお笑いや演劇サークルに入るという輩もいるくらいだ。やつらは端から役者になるつもりはない。学生時代の思い出作りになればいいくらいにしか考えてない。


社会人の劇団に入ったやつとか知り合いに何人かいるけど、だいたい、あたおかである。


役者や芸人になってもそれでメシが食えるのはごくごくひと握りなので、大半は淘汰されてしまう。


ましてや、商業演劇から大衆演劇に来るなんて、知ってる限りだと数名しかいない。


なので、これ以上、役者を減らさないように、だましだましやるしかなかったりもする。後継者なんていれば儲けもん、いなければ、あと何年その劇団を観ることができるのか、観る側も真剣にならないといけない。


いつまでも、あると思うな、大衆演劇。


X男も11月までだし。


劇団新とか、復活は難しいだろうし。劇団菊とか。


優木直弥も座員増やすことができるのか。


大衆演劇はたぶん、現状維持するだけでも大変だったりする。現状維持なんて言うと後ろ向きに感じるかもしれないが、40代で20代の体力とか維持するのは並大抵のことではないはず。


進化とか簡単に言うけど、現状維持するのも大変である。


ゴルフのシングルプレイヤーとか現状維持するだけでも大変だったりするし。


語学とか、少しやらないと確実に落ちるし。


現状維持しつつ、新しいこともやらないといけない。だから、難しい。