どうも、わたしです。
今回は窪美澄さんの『ふがいない僕は空を見た』です。
窪さんはR-18文学賞を受賞されて、本作はその受賞作も収録されてます。
収録されている、というよりも前編通して繋がっているので、違和感なく読めます。
1話の主人公は斉藤くん、2話の主人公は里美、3話の主人公は松永さん、4話の主人公は良太、5話の主人公は斉藤くんのお母さん。
この話自体、実はそこまでわたしに影響を与えたわけではなくて、この受賞した賞がわたしの憧れの賞でもあったんですよ。R-18文学賞とも呼ばれていますが、元々は女による女のためのR-18文学賞という名前です。これは、女性のみが応募でき、選考委員や下読みの方も全員女性という賞です。女性ならではの感性で性を描くというのが元々の趣旨でしたが、現在は女性ならではの感性という趣旨に変わっています。
そろそろ、こういう賞にもどんどん応募していきたいなって思っているわたしです。
で、結構年数の経った賞になりつつあるんですよ。有名どころで言えば、
豊島ミホさん
宮木あや子さん
綾瀬まるさん
山内ハルコさん
あたりでしょうか。みんな、色恋沙汰でわーきゃーってわけじゃないです(当然か)。
どこか苦しく、狭い世界だったり、どうしようもない状況だったり、そういう中でもどこかで光を求めている。行きついた先がセックスなのか愛情なのかそれともまた別のものなのかは人によって違いますけど、どれも正解だろうしどれも不正解だと思います。それは、当人しかわからないことだから、何も言えない。
と話は逸れましたが、どうして数あるなかでこの作品をわたしはチョイスしたのかというと、タイトルに惹かれたというのが正直な話←ひどい
あらすじとしては15歳の斉藤くんがアニメキャラのコスプレが趣味の里美と同人誌販売会で出会い、恋仲になるというまあまあ本当にわたしはあらすじを書くのがへたくそなんですが、1行で書けばそういう話です(どういう話)。
でね、受賞作が1話なんですね。読み始めて思ったのは、
正直、しんどい。
でした。この感覚は2話を読み終え、3話の途中まで続きます。
あのーまだ15歳の斉藤くんはさておいて、主婦であり年上の里美のあのオツムのスカスカ具合はどうなんだと。
だけど、読み進んでいって、実は里美は妊娠への姑からのプレッシャーや夫からのモラハラに近い言葉なんかにずっとストレスを感じつつも、自分が【ふがいない】女であることを自覚していて、結局は夫のもとでしか生きていけない、1人では生きていくこができないのだと思ってます。
だけど、斉藤くんと出会って初めて、1人で生きていけるようになりたと思います。
ただ、相手がね、うん、15歳だから。
斉藤くんもこれから起きる事件なんて想像もしないまま快楽に溺れる【ふがいなさ】を抱えています。
一度離れようとするんですが、里美に対する感情が恋だと気付いた斉藤くんはそこからコロコロと堕ちていきます。
同時に里美も堕ちていくんですけど、里美の夫が猛烈に怖い。本当に怖い。読んでて心臓がぎゅってなって咳しました。わたし。でもね、5話の中でもっとも印象に残ったのは、斉藤くんの友人でもある良太の話。
彼は15歳ではしちゃいけない苦労をしてます。認知症のおばあちゃんを1人で介護して、母親は借金まみれで逃げ回ってて。必死に深夜のコンビニでバイトして、頑張って頑張ってるのに報われない。貯めたお金も全部母親が持ってっちゃうし。この時感じた良太の絶望感って、すごくわかるんですよ。
ああ、自分はどれだけ頑張っても突き進んでも、どうにもならないんだなって。この人生を諦める、という絶望感。それを15歳で感じなくちゃいけない苦しさ。本末転倒な言い方をすれば、斉藤くん里美のくだりはもうわたしの中で割愛してもいいくらい。恋とか愛とかそういうことにすら目を向ける暇がないくらい生きることに倦怠感を感じてる良太がどの話よりも好きです。
窪さんは、話によって文体が変わります。それもごく自然に。
この部分が元々ライターだけあって本当に素晴らしい技術だと思います。
ちなみに、映像化もされていて。
観ましたけど、あんまり好きになれなかった。
ただ一つ言えるのは、良太役が我ら(わたししかいなけど)の窪田正孝くんなのですよ
アンニュイな感じがとてもよかったし、絶望感もちゃんと感じる目つきでした。
では。
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