どうも、わたしです。
今回は紗倉まなさんの『最低。』をご紹介。
紗倉まなさんと言えば文学系AV女優としてずっと注目していました。
彼女が書くエッセイはとてもわかりやすく、だけどこちらの想像を掻き立て、本人の当時の気持ちをまるで今見ているような感覚に陥らせてくれるようなものが多いので、以前から好きでした。
そして、紗倉まなさんといえばレズ物って勝手に思ってます(黙れ)
さて、本に関してですが、ネタバレ上等になってしまうので、ご注意ください。
4人のAV女優が出てくるお話です。それぞれが一章になっていて、今回の書き方は「私はこう思った」というものではなく「彩乃はこう感じどうだった」という書き方なので、より文学的です。
わたし、お話を書く時この書き方できないので、すごく羨ましい。とても本を読んでいる方なのだなとおもいますし、見習いたいと思う。
人気AV女優、所属AV女優と付き合っているAVプロダクションの社長、夫とセックスレスに悩みAV出演を決める主婦、AV女優を母に持つ娘。
こういう人達って、絶対現実世界であると思うんですよ。
特に紗倉まなさんなんて、トップ女優として頑張り続けているから、色んな男女を見てきただろうし、自分自身も辛い思いなんて山ほどしてきたんだと思う。それでも、こうして文章として表現できて、それぞれの気持ちをしっかりと汲み取って、こちらに伝えてくれるというのは、とても重たい作業ではあるし、偏見が常にあるものをここまで情景豊かに何も知らないわたし達に苦しさを教えてくれて、読み終える頃にはAVに出ること自体がとても勇気が必要でもあり、そこしかなかったという場所でもあったのだとわからせてくれる。
それって、本当にすごいことなんですよ。本当に。
AV女優のインタビューなどをまとめた『名前のない女たち』やニュースでもバッキー事件とか強制出演とか色々あるし、そういった情報しか知らないわたし達は勝手に偏見を持ってしまうこともしばしば。
だけど、そうじゃなくて、前向きにAV女優になる人もいれば誇りに思っている人もいる。トップ女優だから思えることかもしれないが、トップで居続けることの大変さというのはどの世界でも同じだと思う。
そして、どんな職業だとしても1人の人間なのだとこの作品では教えてもらえます。
出てくる人全員が苦しさを抱きながら生きていて、自分の居場所を見つけたいと願っています。そこがAVだったというわけではなくて、その時自分を認めてもらえる場所がAVだったというだけのこと。そんな風に感じました。
女性って、男性よりも本当に承認欲求が強くて、愛して欲しい、自分しかない何かが欲しい、そして、認めて欲しい。そう思う生き物です。いわゆる、唯一性が欲しい。他の誰もない、あなたじゃなくてはだめなんだと分からせて欲しい。
これね、わたしもあるんですよ。
世界のどこにも自分じゃなくちゃだめだってことはないのはわかってるし、そこまで自惚れちゃいないんだけど、でも、少なくとも自分が愛している人だけには、そう思って欲しい。それが例えわがままだとしても。
大げさな表現とか、何かどんでん返しが起きる、とかそういうものはないです。
ただ、静かに時間が流れて、静かに時になげやりになりながらも自分の中での答えや妥協点を見つけていく、そんな話です。
結果的に悲しい話の方が多いけれど、それもなんだかリアルで、共感できました。
実際、読み終えた後に「最低。」なんてことは思いつかないほどの感覚でした。ですが、タイトルに関して紗倉まなさんが話していたことが印象的です。
「小説のタイトルは、物語を書き終えた最後につけました。小説の4人の女性の話で、文章のどこにも最低という言葉は出てこないのですが、この仕事をしていると、心の中でAVという仕事を選んでしまったこと、そのことで誰かを傷つけてしまったこと、そして自分の選択で頑張り続けている自分自身も含めて、全く後ろめたさを感じずにやっている女性は、誰一人としていないんじゃないかと思って。それを考えた時に、心の中でつぶやく言葉ってなんだろうと考えた時、このタイトルを選んだんです」
この一文を見るだけで、非常に聡明な方だということが理解できます。
こんな風に毎日を過ごしているだな、こんな風に仕事と向き合っているんだなと思うと、もう一度作品を見てみたくなりましたね。う、うん。
総じて言えることは、人間ってね、ややこしいんです。
では。
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