どうも、わたしです。

今回は桜庭一樹さんの『少女七竃と七人の可哀想な大人』をご紹介します。

桜庭一樹さんといえば『私の男』が有名ですが、個人的にはこっちを推したい。

ラノベ文学って感じの作風ですごく好きです。

そして、男ども、消えてしまえと思える作品です♡

ネタバレ有りなので、ご注意ください。

 

 

彼女の作品を読むと綿矢りささんを読んでいる時と同じ感情になる。

瑞々しいのに苦しく、無防備に傷がつく。

あらすじとしては非常に美しい美貌で生まれた七竃(ななかまど)は群がる男を軽蔑し、幼馴染の同じように美貌の雪風と鉄道模型だけを信じ友として生きている。だけど、その美貌のせいでくだらなくて可哀想な大人が放っておいてくれない。

この作品は冒頭が本当に秀逸です。

 

【辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。ある朝突然に。

そして五月雨に打たれるように濡れそぼってこころのかたちを変えてしまいたいな。】

 

もう、何言ってんの?って思うけど、入りの文章でこんなこと書かれたら、読まずにはいられません。この男遊びをしたいと思ってしまったのは、七竃の母です。そこから、物語は始まる。

突然、男遊びをしたいなって思うこと、あります?

いやいやないよ。

って思います?なら、聞き方を変えましょう。

突然、せっかく連れ歩くなら見た目の良い男と一緒にいたいな、とか、一度でいいからモテたいな、とは思ったこと、あります?

あるでしょ、本当は。そうすることによって、自分という存在から自由になりたいって、思ったこと、あるでしょ、ほんの少しくらいは。

そんな感じで、七竃の母も自分から自由になりたくなったんですよ。

しかも、もうなんか誰かに愛されるとかなんかそういう感情じゃなくて、もうなんでもいいから構ってとにかく寝ろって感じの暴走した気持ち。ええ!って思うけど、わからなくもないわたしって変なんですかね。

 

だってね、ある程度年齢を重ねると気付いちゃうんですよ。

あいつもこいつもカスばっか。

くらいになっちゃうんですよ。男性経験がものをいうとか遊んだ女の言うこと、とかそうじゃないんです。真面目に相手と向き合い続けてきた結果「なにこれカスばっか」って思うこの感覚。

きっと、これは男女差がありまくるのだろうと思う。すみません。

結局、どれだけ愛しいと思って相手を愛したところで手に入れられなかった人生。そんな女性の悲しい気持ちがこの冒頭に溢れていて、そこから狂う物語にも溢れています。

で、妊娠して生まれたのが七竃。

顔の良い人の典型的な悩みである【孤独】が七竃を支配します。

羨ましい悩みだけど、きっと本人にとってはひどく重大な話なのですよね。

そして雪風はいつも七竃に言います。

 

「君がそんなに美しく生まれてしまったのは、母親が淫乱だったからだ」

 

この物語に出てくる人々は全員寂しくて愛されたくて、でも、うまくいかなくてどうしようもなくて、目の前を道を進むしかなくて、振り返ることを至極恐ろしがっている。七竃の母親はずっと一人の男に愛されたかったし、七竃は母親に愛されたかったし、雪風は七竃を自分が思っているよりずっと大切に思っていた。

みんな自分の気持ちが不確かで、だけど確かめたくて、だけど苦しくて、どうしようもない大人とその渦の中でもがいて見下してでも必要としていた思春期の少年少女。美しいということは汚らわしさと比例していて、外見というのは自分じゃ選べなくて、内面というのは自分で選んで突き進んだつもりでいても、もしかすると選ばされてしかたなくそうなっている自分を演じているだけかもしれない。

 

そんなことを思わせる話でした。

少女も少年も複雑怪奇。

でも、美しい。

では。

 

 

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