どうも、わたしです。
今回は苦しい気持ちになってこんな風に愛されるのもいいなぁと思いたい時に読む本。
中村航さんの『僕の好きな人がよく眠れますように』をご紹介。
中村航さんの作品と言えば『100回泣くこと』が映像化されているので、名前だけは知っているという人も多いのでは。
わたしが初めて読んだのは『リレキショ』でした。
中村航さんの作品は重松清さん読んでいる時と似たような気持ちになる。
温かい文章なのに、どこか冷えたところもあって、結果的に苦しくさせ、でも読まずにいられない気持ちにさせる。
特にこの本はわたしの中で印象深い作品になりました。
道ならぬ恋、といえば『失楽園』のような情熱的で一瞬で燃え上がり一瞬にして塵となって消えてしまう場合もありますが、このお話は土鍋に入れた水を沸騰させるようにゆっくりと、そして沸騰すればマグマのように溢れ出す愛の話です。
主人公は大学院生で理系の大学で研究をしていて、その大学にゲスト研究員生として現れた女性と少しずつ距離を縮めて少しずつ恋に落ちておきます。ただ、この小説の変わったところは、思い悩んでない。道ならぬ恋なのに、障害となる対象の描写があまりないんです。なので、こちらもふと「あれ?これって普通の恋愛小説だっけ?」って勘違いします。
主人公たちは目の前の好きな人をただ好きでいること、それに集中しようと考えます。その感情がこの一言に集約されます。
「爽やかに行こう」
本来であれば爽やかもへったくれもないんですが、そこは小説なので、まぁちょっと置いておきましょうよ。
そして面白いところは2人の会話です。
本当に自然で気の合う男女なのだろうなと思わせるスムーズな流れ、こういう時「もっと早く出会っていたら…」とか言いかねないのに2人ともそんなこと言わない。目の前で笑っているお互いが全てで、大切だと思わせます。最後までただただラブラブで。それが、こちらとしてはどうしようもない気持ちにさせます。
よく人は誰かの1番になりたいと考える。
それは、好きな人であればなおさら。
そして、好きだと言ってくれるなら1番にしてよって思うのはそりゃ当然。
だけど、この2人は「好き」「好きだよ」「好き」「好き」それだけです。
これって、破滅的でとても退廃的だと思う。
美しいなんて言っちゃいけないけど、だからこそ、結末はあんな感じなのでしょう。
全てにおいて、白黒はっきりさせることが素晴らしいわけではないと思ってます。
なんとなく、進んでいくことも悪いわけじゃない。
わたし達は理由と答えを求め過ぎなのかもしれませんね。
中村航さんのような文章、書いてみたいけど、きっと書けないからずっと憧れです。
では。