どうも、わたしです。
今回は小川洋子さんの『薬指の標本』をご紹介。
実は、わたし小川洋子さん苦手だったんですよ。
なんでしょう、なんとなく、文体が苦手で。
なかなか読むことがなかったんですが、この小説はタイトルから惹かれてしまいまして。
「あれ、そういえばちゃんと読んでなかったな」
という言い訳を利用して購入。
もうね、素晴らしいの一言
苦手から一気にわたしの人生に残る1冊になりました。
ネタバレしないように頑張ります。←
全体的に諦めとか憂鬱とかそういう雰囲気が漂ってます。
終始不安定で安定した感情。これがすごく素敵で、仕事の事故で指の一部を失った主人公が違う仕事に就いたことから物語は始まります。その職場というのが思い出を標本にする場所です。
そこで、主人公は融ける、侵食される、馴染むことになります。どういう意味なのかというと人間というのはいつだって他者に少なからず影響を受けて、少しだとしても変化して生きています。自分はこれだというものを見つけたとしても実際は何も変わらないなんてありえなくて。だけど、それは全くおかしなことではないんです。
主人公は女性で、ずっと隔離された場所にいます。そして、雇い主に淡い(のかな)
恋心を抱きます。でも、その気持ちは報われないことも知ってる。
主人公は仕事で指の一部を失った時、自分自身も一部失ったように感じています。
そのせいなのか、意識と自分がどこか離れてしまっています。
だから、主人公は執着心のもとまるで子供みたいに報われない恋に地団駄を踏み、依頼主に嫉妬をしたりしてしまいます。
そこから向かう気持ちは、ある種の狂気的な独占欲に繋がり、相手を縛り付けたいのではなく、自分を縛っていて欲しい、固定して欲しい、という感情です。この部分ってすごく繊細で曖昧な部分で表現しにくいはずなのに、美しく巧みに表現され、結末に進んでいきます。
これはもう、圧巻。
好きな人の手によって、変わるはずの人間を変わらない標本になる。
あああ、と思う。あれ、これってネタバレだ。
もう一つ話が入っていますが、どちらも本当に痛々しくて苦しくて美しい。
『薬指の標本』は2005年にフランスで映画化されています。
では。
オウンド版も良かったら見てね。
こちらは日常のことを書いていて、毎日更新です☆