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どうも、わたしです。

今夜は桐野夏生さんの『OUT』をご紹介します。

もうわたしがご紹介しますなんて言わなくても知ってる人も多いでしょうし、この作品が桐野夏生さんの名前を一気に有名にさせたのだろうと思います。そのあとの『東京島』もわたしは割と好きです。

ドラマにも映画にもなったので、なんとなく知っているとか名前だけは知っているという人も多いかもしれませんが、わたしはこの作品はまずドラマから入りました。


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深夜の弁当工場が舞台で、多くが主婦や外国人労働者。時給が良いから、結構皆さんベテランだったりします。

そこで、同僚から「旦那殺しちゃった」と主人公が電話を受けてから物語は一気に進み始めます。旦那殺しちゃった同僚は元々DVを受けていて、その殺されちゃった旦那は賭博とかやってるようなサラリーマンとは名ばかりのどうしようもないクズ野郎なんですがね。

衝動的に殺してしまったと言う同僚に日頃からのDVを知っていた主人公は言います。

「あんたはどうしたいの。協力はするよ」

と。これは、別に同僚を救いたいとか正義感がとかそういうものじゃないです。まあ、主人公自体もよくわからないと言っていましたし、明確な答えが導き出されるわけではないので、想像でしかありませんが、運命共同体のようなものですかね。主人公以外にも手伝ってくれる人が2人いますが、なかなか陰鬱な生活をしていまして。

1人は姑の介護とかなり出来損ないの娘と暮らしている。

もう1人はお金にだらしなくて借金まみれ。

かくいう主人公も夫とは長年会話もなく1人息子も引きこもり。

こんな感じの4人が徐々に日常が壊れていくさまをグロテスクにリアルに光もなく描かれています。


ドラマに出ていた主人公役の田中美佐子さんの演技がぱっさぱさで。本当に疲れていて、本当に日常が嫌になった賢い主婦を演じていまして。ぱさぱさの中に浸透していく非日常の水分。これは、ある意味魅力的なのかもしれません。

で、また、明言は避けますが悪い人役で出ている柄本明さんが本当に怖い。

夜出くわしたら即タクシーに乗るもしくは警察に電話しながら歩くレベルに怖い。

かなり完成度の高いドラマだったので、原作にも興味が湧いて買ったのがきっかけです。

いやあ、もう原作の方が怖い。

女のリアルというかなんというか。

それぞれ本当に辛い現実を生きていて、それぞれが死体隠滅によって何かを見出したいとような、なんというかこう、あの、なんとも言えない気分になります。

借金まみれも姑の介護もしょうもない娘になけなしの貯金持ち逃げされて泣くのも家庭が崩壊するのも他人事じゃない気がして、苦しくなりました。

ありえないって思うのにどこかありえなくないんじゃないかって思わせるのが桐野夏生さんのすごいところ。そして、全員本当に救いがない。

ある種の自由は手に入れられます。でも、それは本当の意味でなのかなんなのか。

あの頃はまだ若かったので、理解しきれなかった部分をそろそろいい大人になってきたので読み返して理解してみたいなって思います。もしかするとやっぱり理解できないって思うかもしれないけど。

では。


オウンド版も良かったら見てね。

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いつか魚も溺れる(オウンド版)