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どうも、わたしです。

今回は恒川光太郎さんの『夜市』を紹介します。


わたしね、多分日本ホラー小説大賞出身者フェチだと思うんですよ。

恒川光太郎さんしかり、岩井志麻子さんしかり、『黒い家』の著者である貴志祐介さんしかり。それぞれ、ホラーだけどその怖さというのは心霊的なものではないし残虐極まりないわけでもなかったりします。

なら、何が怖いのか。

それは、人間の底が見える、という怖さです。

ネタバレはないように、が、頑張ります。

しかけそうな感じなので抵抗があったら戻るボタン、もしくはわたしのもう一つのホームページへ来てね(黙れ)☆


あらすじとしては、同級生に「夜市に行こう」と誘われるところから始まります。

夜市と言っても、台湾で有名な夜市ではなくて、妖怪が色々な品物を売る不思議な市場のことです。この夜市では望むものがなんでも手に入ります。

この誘った同級生、裕司くんは小学生の頃に一度夜市に迷い込んだことがあり、自分の弟の魂と引き換えに野球の才能を買いました。確かに野球の才能を開花させた裕司くんですが、ずっと弟を売ったことが罪悪感として根付いていました。そして、買い戻すためにもう一度行きたいというのがあらすじです。


もうね、すごく不思議な世界観なんですよ。

そして、裕司くんがね、良い子なのよ。

弟売っちゃう時も本当に子供の悪意も悪気もないのにひどいことしちゃうあれが全面に出ていて。とても軽い気持ちで、自分の欲しいものが手に入るなら、というそれだけで売ってしまって、徐々に大人になっていった裕司くんはあんなことをしてしまった自分を責め続けます。それは、どれだけ野球で成績をあげても同じこと。


妖怪は言うのです。

「何かを手に入れるためには、何かを失わなければならない」

と。


なんでしょう、世界観の中にどんどん引き摺り込まれていって、まさかわたしも夜市に迷い込んだのかしらって思うくらいに艶々した文章。小難しい言い回しをするわけでもなく、端正で美しい文章。

日本ホラー大賞の審査員達が絶賛して満場一致で決まったというのも納得です。

文章力もさることながら、文章の選択と言いますが読んでいる最中にどこも苦になる部分がなく、ただただ先に進みたい、ラストを知りたいと夢中にさせてくれる本でした。

この本を読んでいる時にいつも聴いていた弦子さんの『不得不愛』という曲が物語にぴったりでわたしはいつも通学のバスの中で誰にも邪魔されない世界で夜市を読んでいました。


わたしは、何かを得るために何かを失えるだろうか。

いつも思います。

でも、今は守りたいものが多すぎて、失いたくないものが多すぎて、何を得たいのかがわからない、というのが正直な話。

きっと、歳を取りすぎたのですね。

では。


オウンド版も良かったら見てね。

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いつか魚も溺れる(オウンド版)