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谷崎潤一郎さんの『痴人の愛』

これはピグマリオンコンプレックスという言葉を流行させた小説だとも言われています。

その時代を生きていないので、知らないですが、この話を読んだ時、なんとなく納得できました。女性を人形のように扱いたい、という気持ち。Wikipediaでは『性癖』と括られていますけど、なんだろう、性癖で括るにはなかなか難しいものを感じました。

ネタバレはほぼ含まないので安心して読んでいただけたらと思います。


すごく端的に話すと理想の結婚像(女性像)を抱いている彼女いない歴年齢みたいな男性が、理想的な少女に出会って自分の妻にして理想の女性に仕立て上げよう!という話です。年齢設定がまた絶妙で少女が15歳なんですよ。まぁ、あれですね、いい時期です。

年の差確か13歳くらいだったかな。この年代の13歳差って結構すごく感じると思うのですが、15歳で見つけた少女が16歳になった時に捕獲。結婚します。

この部分は少女、という感じがしますね。なんだろう、後先はさほど考えずに成り行きに任せる感じのふらふら感。この少女はダイヤの原石でとても魅力を秘めた子なんです。

ナオミって名前。

またこのナオミって名前のチョイスが、いいんですよ。

恩田陸さんの『六番目の小夜子』を読んだ時に小夜子になりたいと思ったのと同じで、わたしはナオミになりたいと読了後に思いました。13歳の時にTSUTAYAで谷崎潤一郎フェアをやっていなかったらこの小説には出会うことがなかったので、TSUTAYAに感謝。思えば、わたしの少女論というのはナオミに通じているのかもしれません。


話がずれました。

で、まあ若いんで当然遊びたいお年頃を迎えるんですけど、せっかくの生けるお人形を手に入れたものだから手放したくはないんです。囲いの中で、狭い世界に閉じ込めておきたい。最初は「綺麗だ」「魅惑的だ」とお人形さんが言われて喜んでいた主人公もだんだんと沼に沈んでいきます。

最終的に主人公はドMだったんじゃないかと思うラストになるんですけど、人を本当に好きになって愛でる、というのはこういうことなのかもしれないとも感じました。

よくある恋愛コラムで語られることはない、底の底の感情。

どこか異性を手に入れたい、というよりも、自分の手の中にある宝物をもう二度と他の誰かの目に触れさせたくない、というような感情。

いいなぁ、と思います。


この作品に出会ったおかげで、通ずるものがある作品を観たり読んだりをかなりしていました。

江戸川乱歩様の『人でなしの恋』

実際にあった事件を基にした『完全なる飼育』(その後もシリーズ化されていますが、わたしが認めているのは竹中直人さんと小島聖さんのだけ)

乙一さんの『優子』(これは結構後に読みましたが痴人の愛を思い出させてくれた良作です)

ウラジーミルナブコフの『ロリータ』

などなど。

これらの作品も追々語っていこうかなって思います。

わたしの感覚の原点を今回はお伝えさせていただきました。


ちなみに痴人というのは【バカな人】という意味です。

つまりバカな人の愛、愚かな人の愛、というどうしようもないタイトルなんですが、誰かを求めて自分の手元に置いておきたくて好きで仕方がない、という、その状況は他人にとってはバカで愚かだけれど当人にとっては紛れもなく【愛】なんです。

また、この話は映画にも舞台にもなっています。

舞台版のこの写真、すっごく好き。


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