ようやく全巻読みきった。


トルストイ「アンナ・カレーニナ」4巻

アンナ・カレーニナの最期、駅で汽車に飛び込むくだりは読みながら、
「まあ、そうなっちゃうよね・・・」と思う半面、
ヴロンスキーは冷めきってるから無理でも、
屋敷の召使いや馬車の御者たち、誰か気づいて止めろよ!
と思ったりもしたが、

彼女の心の中で、
自分だけを愛してほしい欲求が満たされず、
見えない嫉妬が憎しみに変わり、
やがて自らの死によって全てから解放されて、それがヴロンスキーに対する勝利となる。
と思い込んでいく描写は、アンナ・カレーニナが激しい渦のなかに巻きこまれて沈んでいくようで、たぶん誰も止められなかったのかもしれない。
気持ちはわかる。

アンナ・カレーニナ亡き後も物語は続き、
個性派地主貴族リョーヴィンは「人は何のために生きるのか?」みたいな、
これまた壮大なことを悩んで(この人やっぱり濃いキャラ)
「人はこの世の万物とともに、自然の営みのなかで生きて、他人のために尽くす」
みたいな結論を出してキティとの幸せな生活をおくっていく。
アンナ・カレーニナとは対象的な生き方を描いて終わる。


何とか読み終えたけど、個人的には「戦争と平和」のほうが面白かったような気がする。


リヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲を聴きながら読んだが、
「自分がこの世からいなくなっても庭の花はここに咲き続ける」
という作曲者が晩年に遺した言葉とアンナ・カレーニナの生き様が重なった。

アンナ・カレーニナがいなくなっても、リョーヴィンやキティがいなくなっても、
そして物語を読んだ私がいつかいなくなっても、
季節はめぐり、春になればそこに花は咲く。