気象系51。
J禁、P禁、ご本人様筆頭に各種関係全て当方とは無関係ですのでご理解よろしくお願い致します。

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 カチャカチャと皿とフォークが音を鳴らす。
 ふたりだけの空間で、フレンチなんてシャレたもんを食べながら俺はなんでこんなことにってずっと考えていた。

「どうした?美味しくない?」
「ううん、美味いよ。」

 なんとかのなんとか?とかいう肉の塊を頬張りながら怪訝そうな顔をしてくるまつもっさんに笑ってみせたけど、一向に手は進まなかった。
 原因は分かってる。最近こういう外出が多いせいだ。
 俺の告白から始まった関係は至ってシンプルだったはずだ。女関係で週刊誌に騒がれて事務所から自粛するように言われていたまつもっさんに、メンバーなら写真撮られてもおかしくないだろって迫った。流されるように始まったこれは恋人っていうよりもセフレみたいなもので、もうずっとヤる前提でしか会ってなかった。そんな状態が何年も続いていたのにここ半年くらい急に映画行こうとか釣り行こうとか、セックス以外の目的でもっぱら外で会っていて……つまりはレスってる。
 これは飽きたって事なのかなあって思ったら食事も喉を通らない。

「なに、体絞ってるの?」
「えっ?」
「新しい仕事?でもちゃんと食べなきゃダメだよ。絞るのは運動でね。」
「……ああ、うん。」

 ヤるのはほとんどまつもっさんの家だったから俺を家に上げたくないのかな。新しい女が出来たとか。……それなら性格上俺の事は真っ先に切りそうだ。てことはあれかな、まだ片想いなのかな。
 じゃあ今のこれって……別れる前の……なんていうの?せん別?的な?
 セフレの間で少しは俺に対して情でも生まれてくれたってこと?

「大野くん。」
「……ん?」
「手、止まってる。」
「ああ、うん。」
「……。」

 覚悟しなきゃかなあ。

「どうしたんだよ。上の空だね、今日。」
「そう?」
「うん。いつも以上にぼーーっとしてる。」
「はは、してねえわ、いつも。」
「してるよ。ねえ、もしかして体調悪いの?」

 怪訝そうな顔で覗き込んでくるまつもっさんの目は心配してますってちゃんと書いてあって、本心なんだと読み取れる。その優しさがツラい。俺を気にしてくれんなら今まで通り抱いてくれよ。

「絶好調超です。」
「どこがだよ。」
「わたくし嘘吐いた事ありません。」
「……嘘つけ!」

 お、笑った。やっぱり可愛い。好きだなあ。
 覚悟しなきゃって言ったってすぐに出来るもんじゃない。もうちょっとだけ時間が欲しい。このデートもどきがいつまで続くのか分からないけど、お前がもういいってなるまでにはちゃんと思い出にしてしまうから。

「今更隠し事とかないから。」
「そゆんじゃねえよ……んーー、なんてえの?夢見てえだなって思ってただけ。」
「夢?」
「うん。不思議だもん。まつもっさんとこうしてんの。」

 高級店で恋人とふたりきり、なんてシチュエーションはセフレの俺たちには関係ないと思ってたし。いや、別に恋人じゃないんだけど。なに考えてんだと思って誤魔化すように肉を頬張る。味なんてほぼわかんない。

「夢になんかさせないよ。」

 ふと、やたら真剣味を帯びた声が聞こえて顔を上げた。
 キリッとしていつだって凛々しいまつもっさんが射貫くみたいに俺を見る。

「アンタから始めたんだから夢になんかしないでよね。」
「……ああ、うん。」

 それは俺が終わらせろって意味か。今のこの時間に浮かれてないでセフレの現実を見ろって。そういうこと?
 ……それなら、

「ね、今日まつもっさんち行っていい?」

 最後にするから、めちゃくちゃに抱いてよ。

***