気象系51。51の日おめでとう。
J禁、P禁、ご本人様筆頭に各種関係全て当方とは無関係ですのでご理解よろしくお願い致します。

***

 友達でいよう。
 そう言われてからどれだけ経ったのかも記憶に残っていない。ただオレの中で確かなのはどれだけの日々を過ごしてもこの先もずっと大野くんを好きで居続けるだろうということ。変わる気配のない恋慕を抱えて今日も大野くんと飲んで、べろべろに酔っ払ったこの人を放り出しも出来ずにしくしくと飲んでるんだから筋金入りだ。

「……好きだよ。」

 溢れて止まらない気持ちを何度口にしただろう。本人がいるところでも居ないところでも聞かれてないと分かるとぽろりと落ちていくそれ。そろそろ抱えきれなくて大野くんにまたぶつけてしまいそうな予感がしてる。だとしてもきっと受け入れられる事はない。そんな気がする。
 だってもう何年も変わらないんだ。モーニングコールで起こして、ご飯を一緒に食べて、服を買いにいって、舞台やライブを一緒に観て、国内だけじゃなく海外の観光地に二人だけで行ったりしても友達なんだって。……いっぱいいる友達とやってる事同じだろう?って言われる。
 違うよ、大野くん。ひとつだけ決定的に違う。オレはそうやって大野くんと同じように過ごす友達の誰ひとりとして恋しいと思った事も愛しいと思った事もない。大野くんと出掛ける事だけを密かに『デート』と呼んでる。そんな事他のやつになんかしない。もう何年も何年も。ずっとそう。

「友達って、こんなにツラいんだね。」

 触れられる距離にいるのに触れられない。友達には簡単に出来る戯れも大野くん相手にはどうしても竦んでしまう。簡単に触れないくらい大切な人がオレにもいる事を喜ぶべきか、嘆くべきか。このひとりでは抱えきれない激情を子供のように駄々をこねて、なんで分かってくれないんだと詰っても許されるんじゃないかという気にさえなる。そうしたら抱えきれなくなった分を一緒に持ってくれるようにならないかなって。

「好きだよ。……全然消えないんだ。忘れられない。ねえ大野くん。おじいちゃんになっても想い続けてていい?」

 そうなるまでにはあと20年。今は長生きの時代だから30年かもしれない。昔は3年も同じ人を思い続けるなんて無理だなんて思っていたはずなのにね。あの頃は本気の恋をしてなかっただけなんだって今なら分かる。
 机に突っ伏して眠る大野くんの髪を弄ぶ。白髪が混じり始めた愛しい髪は先日暑いからと切られてしまった。もうずっと長い髪の彼を見ていない。最後に長いなと感じたのは日に日にやせ細る程心血注いで作り上げていた弁護士の彼を演じていた時だろうか。10年以上も前の記憶の中ではあの時も、心配だからと飯を食いに連れ出して酔いつぶれた大野くんにせっせと世話を焼いていた。今と大して変わらない。
 状況も、関係も、気持ちも。
 ──気持ちは……自覚してなかったか。

「……いいわけねえだろ、ばーーか。」
「!大野くん、起きてたの。」
「お前のひとり言デカすぎ。」
「あ、ごめん。」

 のそりと起き上がった大野くんだけどぼーっとしてるのか顔はうつ向いたまま。視線が合わなくてもやもやとする。声が聞けて嬉しい。でも顔が見れたらもっと嬉しい。
 年々そうやって貪欲になっていくんだよ。膨れ上がっていく気持ちを抑えられないんだよ。ねえ。

「……友達じゃだめなの?」
「だめだから告白したんだよ、オレは。」
「なのにずっと友達のフリしてたんだ。」
「あんたが友達がいいって言うから。」
「いいとは言ってない。」
「はあ?」

 なにそれ、どういうこと?

「意味わかんないんだけど。」
「……まつもっさんの事、そういう目で見た事なかったし。」
「じゃあ考えてよ。」
「わっかんねえよ。だってそもそもお前の事好きだもん。これが友情かそうじゃねえかなんてわからん。」
「だったらお試し期間とかさあ、設定してくれてもよかったんじゃねえの?!」
「今までがそうだった。」
「はい?」

 言ってる意味が分からない。目をさ迷わせるようにきょろきょろしてる大野くんをじっと見つめて気が付いた。
 切ったばかりの髪に隠れきれてない耳が真っ赤だ。

「お前、マジで俺の事好きなの?一緒にいても全然、普通だし。落とす努力をしろよ意気地なし。」

 最後にキッとオレを睨みつけてふらふらの体が指に鞄を引っかけて部屋を出ようとする。
 ていうか、ねえ。それってもしかして。
 迫って欲しかったって、そう言ってるの?
 この、大野くん曰く”お試し期間”だったらしい今日までの間にあなたの気持ちはちょっとオレに傾いてるって事で合ってる?自惚れていいんだ?
 大混乱する頭を人生で1番フルスロットルで回転させる。その間にガチャンと玄関の閉まる音がした。
 おいおいおいおい!

「待って!」

***