気象系51。ハロウィン予定だったもの。
J禁、P禁、ご本人様筆頭に各種関係全て当方とは無関係ですのでご理解よろしくお願い致します。
***
街はずれの暗い森。人は決して足を踏み入れない深い深い森の奥に一件の洋館が建っている。入れば死ぬまで出てこれない、口の裂けた魔女に食われる等色々と逸話のある森とその洋館は麓の街人から何十年と恐れられていた。
昼間でも薄暗いそんな森の前にある日小さな子供が捨てられた。ボロボロの布を纏っただけの体。あざだらけの顔。ガリガリに痩せた手足。今にも折れそうな首根っこを掴んで放り投げた男がチッと舌打ちしながら手を払う。
そんな男の背後からぬっと現れた青年が頭の上から平坦な声を落とした。
「ここゴミ捨て場じゃねえんだけど?」
「ひぃっ!」
誰かいるとは思ってなかったんだろう。ぎょっとして振り返った目には身なりの良い青年の姿がすぐに映った。ただし、宙に浮いていたが。
「まっ、まままっ!」
「ママでも恋しいんか。」
「魔女!」
「女じゃねえし。」
どこからともなく現れた身なりの良い青年を警戒して男が懐から銃を取り出す。けれどそれが発砲される前に青年は男を無造作に振った手から放った魔法で吹っ飛ばして、森とは反対にある川へと落とした。
「あれ。思ってたより飛んだ。まあいいか。」
静かだから気に入っているこの森に面倒な事を持ち込みそうなやつはお断り。姿が見えなくなった事ですっかり興味を失った青年はそのまま自身が住む洋館まで移動しようとして、ふと羽織っていた外套のマントが引っ張られた事に気付いた。かすかな抵抗に枝にでも引っかかったのかと思い振り返ればボロボロの子供が血にまみれた片目を閉じてじっとこっちを見上げている。
体のあちこちが痛すぎてもう感覚もないのだろう。表情ひとつ変えずに青年をじっと見つめてくる。紫色の綺麗な目と濃い整った顔立ちが気に入って、青年はつい気まぐれで彼を連れて帰る事にした。
「おいらと来んなら人間とはさよならだけどいい?」
青年の腰ほどしか身長のない小さな子供。言葉が分かるか心配だったが割と簡単に子供は頷いてぎゅっと裾を握る手に力を込めてくる。元から綺麗なものと可愛いものは好きな青年は、怖がらせないように子供に向かって微笑むと羽のように軽い体を抱き上げた。
人間よりもよほど長命である魔法使いの人生を瞬く間に通り過ぎていくだけの小さな命だけれど、退屈凌ぎにはいいだろう。
「おいらはサトシ。お前は?」
「……ジュン。」
こうして魔法使いと人間の新しい生活が始まった。
あれから12年。
サトシが拾ってきた子供はすっかり逞しい青年になり外見の変わらぬサトシを追い越して少し見上げるまでになっていた。
「サトシーー、今日いい山菜採れたよ~~。」
「……すっかり所帯じみてんな。」
「え?なに?」
うまく聞き取れなかったのかきょとんとした顔で聞き返してくるジュンに首を振って、彼が採って来てくれた山菜で料理を作る。今日はおこわにしようか、ちまきにしようか。もっちりとしたものが食べたいからちまきかな。そんな事を考えながら手伝ってくれるジュンとふたり、いつものようにキッチンに立った。
「なあジュン。お前もう18だよな。」
「うん、たぶん?」
「そんだけデカくなりゃひとりでもやってけんだろ。」
「……なんの話?」
ぴたりとジュンの手が止まった事にも気付かずにサトシがもち米を研いでいく。
「そろそろ引っ越そうかと思ってて。最近周りがうるさくてさ。森に近づかねえように悪い噂流してたんだけど効果薄くなっててちょっとな。新しい場所も面白そうだし。移ろっかなって。」
「……それで?」
「お前は連れて行かない。人間なんだからちゃんと人間と暮らして幸せんなれ。」
ジュンの手が止まってる事に気付いたサトシが同じように手を止めてジュンを見上げた。
小さい頃からサトシ!サトシ!とついて回ってはなんでも真似をしてキラキラした瞳で見てくるのが可愛かった子供はすっかり手のかからないいい子のまま素敵な男になった。子供の独り立ちを願わない親はいないだろう。
どこに出しても恥ずかしくない子供を満足そうに眺めて、明日明後日で荷物まとめろよ、と告げる。
「あーーいや、新居探す方が先か。いい物件探しに明日は朝から、」
「サトシ。」
「ん?ッんん!?」
急に両頬を捕まえられて強引に振り向かせられたと思ったら、ぱくりと噛みつくようなキスが降る。
「んっ、ちょ、なん、んっ、」
静止の声も届かずにされるがまま貪られて息も絶え絶えになった頃、ガクンと力が抜けて座り込む事でやっと解放された。
「ジュン……?」
「追い出すって事は大人って認めてくれたって事だよね。」
「へ?……まあ、そうなる……のか?」
「じゃあもう子供のフリして甘えたりしない。サトシの事甘やかしてオレ無しじゃいらんなくするから。」
「は?」
「だからまず──オレをサトシと同じ魔法使いにしてよ。」
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J禁、P禁、ご本人様筆頭に各種関係全て当方とは無関係ですのでご理解よろしくお願い致します。
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街はずれの暗い森。人は決して足を踏み入れない深い深い森の奥に一件の洋館が建っている。入れば死ぬまで出てこれない、口の裂けた魔女に食われる等色々と逸話のある森とその洋館は麓の街人から何十年と恐れられていた。
昼間でも薄暗いそんな森の前にある日小さな子供が捨てられた。ボロボロの布を纏っただけの体。あざだらけの顔。ガリガリに痩せた手足。今にも折れそうな首根っこを掴んで放り投げた男がチッと舌打ちしながら手を払う。
そんな男の背後からぬっと現れた青年が頭の上から平坦な声を落とした。
「ここゴミ捨て場じゃねえんだけど?」
「ひぃっ!」
誰かいるとは思ってなかったんだろう。ぎょっとして振り返った目には身なりの良い青年の姿がすぐに映った。ただし、宙に浮いていたが。
「まっ、まままっ!」
「ママでも恋しいんか。」
「魔女!」
「女じゃねえし。」
どこからともなく現れた身なりの良い青年を警戒して男が懐から銃を取り出す。けれどそれが発砲される前に青年は男を無造作に振った手から放った魔法で吹っ飛ばして、森とは反対にある川へと落とした。
「あれ。思ってたより飛んだ。まあいいか。」
静かだから気に入っているこの森に面倒な事を持ち込みそうなやつはお断り。姿が見えなくなった事ですっかり興味を失った青年はそのまま自身が住む洋館まで移動しようとして、ふと羽織っていた外套のマントが引っ張られた事に気付いた。かすかな抵抗に枝にでも引っかかったのかと思い振り返ればボロボロの子供が血にまみれた片目を閉じてじっとこっちを見上げている。
体のあちこちが痛すぎてもう感覚もないのだろう。表情ひとつ変えずに青年をじっと見つめてくる。紫色の綺麗な目と濃い整った顔立ちが気に入って、青年はつい気まぐれで彼を連れて帰る事にした。
「おいらと来んなら人間とはさよならだけどいい?」
青年の腰ほどしか身長のない小さな子供。言葉が分かるか心配だったが割と簡単に子供は頷いてぎゅっと裾を握る手に力を込めてくる。元から綺麗なものと可愛いものは好きな青年は、怖がらせないように子供に向かって微笑むと羽のように軽い体を抱き上げた。
人間よりもよほど長命である魔法使いの人生を瞬く間に通り過ぎていくだけの小さな命だけれど、退屈凌ぎにはいいだろう。
「おいらはサトシ。お前は?」
「……ジュン。」
こうして魔法使いと人間の新しい生活が始まった。
あれから12年。
サトシが拾ってきた子供はすっかり逞しい青年になり外見の変わらぬサトシを追い越して少し見上げるまでになっていた。
「サトシーー、今日いい山菜採れたよ~~。」
「……すっかり所帯じみてんな。」
「え?なに?」
うまく聞き取れなかったのかきょとんとした顔で聞き返してくるジュンに首を振って、彼が採って来てくれた山菜で料理を作る。今日はおこわにしようか、ちまきにしようか。もっちりとしたものが食べたいからちまきかな。そんな事を考えながら手伝ってくれるジュンとふたり、いつものようにキッチンに立った。
「なあジュン。お前もう18だよな。」
「うん、たぶん?」
「そんだけデカくなりゃひとりでもやってけんだろ。」
「……なんの話?」
ぴたりとジュンの手が止まった事にも気付かずにサトシがもち米を研いでいく。
「そろそろ引っ越そうかと思ってて。最近周りがうるさくてさ。森に近づかねえように悪い噂流してたんだけど効果薄くなっててちょっとな。新しい場所も面白そうだし。移ろっかなって。」
「……それで?」
「お前は連れて行かない。人間なんだからちゃんと人間と暮らして幸せんなれ。」
ジュンの手が止まってる事に気付いたサトシが同じように手を止めてジュンを見上げた。
小さい頃からサトシ!サトシ!とついて回ってはなんでも真似をしてキラキラした瞳で見てくるのが可愛かった子供はすっかり手のかからないいい子のまま素敵な男になった。子供の独り立ちを願わない親はいないだろう。
どこに出しても恥ずかしくない子供を満足そうに眺めて、明日明後日で荷物まとめろよ、と告げる。
「あーーいや、新居探す方が先か。いい物件探しに明日は朝から、」
「サトシ。」
「ん?ッんん!?」
急に両頬を捕まえられて強引に振り向かせられたと思ったら、ぱくりと噛みつくようなキスが降る。
「んっ、ちょ、なん、んっ、」
静止の声も届かずにされるがまま貪られて息も絶え絶えになった頃、ガクンと力が抜けて座り込む事でやっと解放された。
「ジュン……?」
「追い出すって事は大人って認めてくれたって事だよね。」
「へ?……まあ、そうなる……のか?」
「じゃあもう子供のフリして甘えたりしない。サトシの事甘やかしてオレ無しじゃいらんなくするから。」
「は?」
「だからまず──オレをサトシと同じ魔法使いにしてよ。」
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