気象系51。毎月15日はいちごの日。
J禁、P禁、ご本人様筆頭に各種関係全て当方とは無関係ですのでご理解よろしくお願い致します。

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 うっすらと目を開けた先では大野くんが一生懸命舌を動かしてオレを気持ち良くさせようとしてる。ぎゅっとしがみつく手が少しだけ震えてて、キスの直前に見えた不満そうな眉がこう言ってはなんだけど可愛い。
 オレが家に帰りつくなり、チューするぞ。って言って唇を奪っていった大野くんはここがまだ玄関だってことを果たして覚えてるんだろうか。

「ん、智、ちょっと待って。」
「やだ。」
「ん、こら、智……待てって。」
「や。」

 頬を包んで離そうとするとムズがる様に首を振って嫌がって、喋るオレの口を追いかけてきてまた塞ぐ。ちゅぱ、ちゅぱ、とわざを音を立てて吸ってくる大野くんの腕がとうとう首に回されて逃げられなくされた。舌先を軽く甘噛みされて痺れにも似た気持ちよさが駆け抜ける。大野くんを抱きしめる腕の力を反射的に強めたら、中を舐めてきてた舌の動きが味わうようにねっとりとした動きに変わる。それまでの性急さがなくなったのは、オレに抱きしめられてる事に安心したからかな。
 落ち着かせようと背中を擦りながら大野くんのキスに応えていると、ちろちろと擽る様に上顎を舐めてちょっとだけ顔が離された。息の上がるとろんとした大野くんの口元を見れば零れ落ちた唾液で濡れてるから舌を伸ばして舐めとって、最後にちゅっと小さなキスをする。

「熱烈な歓迎ありがとう。」
「……そんなんじゃない。」

 ぷくっと膨れた頬でふいっと顔をそむけてしまう。でも首に回した腕を解く気配はなくて、構ってほしいを全面に押し出していた。
 オレがドラマや舞台、映画……どこのか誰かを演じる時、大野くんはたまにこうやってキスを強請って全然離れたがらなくなる。特にオレがキスシーンやベッドシーンを演じたと知った日は。
 最初の頃はこんな風に態度で独占欲を見せてくれる事はなかった。同じ世界に身を置くオレたちはちゃんと相手の仕事も気持ちもわかってるから割り切って観ることが出来ていたし、大野くんは興味津々とばかりに話題に出してどうだった?なんて聞いてきたりもしてた。それが月日が経つにつれて話題に上ることが減り、オレが撮影でキスシーン演るんだよね、などと言った日にはこうしてキスの雨が降るようになった。
 素直に嬉しいと思う。それだけ大野くんの中でオレの存在がデカくて重くて離せないものになってるって事だし。でも大野くんはこうやって嫉妬を見せた後で冷静になるみたいで、夢中でキスをして満足した後でひとりで反省するみたい。気にし過ぎるとオレの負担になるんじゃねえかって。
 そんな訳ないんだけどそれをまだオレは教えてあげてない。
 最初にキスの雨を降らされた時、不安になってるの?と聞いたらケロっとした顔で、全然、と言われた。自分の傍からいなくなってしまわないか、みたいな誰かにとられてしまうかもっていう事じゃなくて、単純に自分のものに対して誰かが占有するような仕草を取られるのが嫌みたい。
 大野くんはミニマリストで色んなものを簡単に手放してしまえる。アクセサリーだったり服だったり、引っ越す時の家具だったりするそれは、人間関係でも有効なようで自分にとって必要、重要、そういうカテゴリーに入っていないものは連絡先さえ交換しない。つまり彼の手の中に残っているものは彼の人生においてなくてはならないものしかないって事だ。いつも飄々としていてなかなか腹の内を見せてくれない大野くんがこうやってオレをその失くせないものに数えてくれていることに優越感がある。
 だから嬉しいって事は教えてあげない。もっともっと焦れて欲しがって、オレの愛がないと生きていけないようになってほしい。

「……なにニヤニヤしてんだよ。」
「だってまだキスしてほしそうな顔してるから。」
「……。」

 オレの口元だけを見てまた顔を背ける。目を合わせないのに逃げないで黙ったままぴとっと体をくっつけてくる大野くん。本当に可愛すぎないか。
 敏感ですぐに笑ってしまう脇腹をつつつ……っとなぞったら、んッ、と鼻にかけた声で小さく喘ぐ。敏感って事は性感帯ってことだと知ったオレがくすぐったいと逃げる大野くんを開発して性に繋がるようにしたそこをイタズラに弄ると腰を捻って逃れようとするから許さずに壁際に追い込んだ。
 観念してオレを見て、もっとキスを頂戴よ。

「足りないでしょ。」
「んっ!」

 ぺろっと耳を舐め上げて薄い耳たぶにキスをする。ぴちゃぴちゃと大野くんがしたように音を立てたらどんどん真っ赤に染まっていくのが愛らしい。半面、唇がわななく様に青くなってく。赤くなったり青くなったり、器用だなあ。って関心してる場合じゃないな。自分から仕掛けた強気な魔法が解けたっぽい。
 心の中でひとり反省会を開催し始めてしまった事を顔色で判断したオレは大野くんを抱っこして履きっぱなしだった靴を脱ぐとやっと家に上がる。

「ちょっ、下ろせって!」
「やあだ。オレも足りないもん。」
「んうっ、」

 喚く唇に吸い付いて塞いで、開けっ放しだったリビングのドアを潜り抜ける。チラチラと障害物を確認しながら進んだ先にあったソファにドサリと大野くんを転がして自分も覆いかぶさる。ビックリした顔で見上げてくる大野くんの両手を胸元でひとまとめにして引き抜いたベルトで絞り上げた。

「まつもっさん……?」
「今日オレが演じてきた舞台よりももっと濃厚なのしてあげる。」
「っ!」
「お腹いっぱいってなってもやめないから5秒以内に覚悟決めてよ。」

 断るなんて思ってないけどそう言ったらその5秒で大野くんの心臓は最高潮に高ぶってきっといつもよりも気持ちよくしてあげられる。わけわかんなくなるくらい感じてオレでいっぱいになって。

「いーーち、っ!」
「ばか、」

 わざとゆっくり数え始めたら縛られて不自由な両手で胸倉を掴んで引き寄せてきた大野くんが、ぶちゅっとぶつかる様に唇を重ねてきてオレの方がビックリして固まってしまう。

「5秒も待てないからさっさとしろ。」

 熱い吐息が濡れた唇を撫でる。伸ばされた舌と縋る手がオレの独占欲を焚きつける。
 言葉もなく奪うように唇を重ねて何度も舌を重ね合わせて擦りつけて、体重をかけて大野くんをソファに深く沈めていく。
 大野くんは知らない。オレの方がよっぽど重くて独占欲が強い事。オレの方こそ重荷になってしまわないか怖い事。

「んふ。きもちいい。」

 でもこうやってあなたが満足そうに笑って受け止めてくれるから、どんどんあなたの存在が大きくなって世界の中心を占めている。

 あなたの愛がなくちゃオレこそ生きていけない。


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