救急車が来るまでに足元の邪魔な物を端に寄せ、仕事道具を持って駐車場に走った。
遠くからサイレンの音が近づいて来る。
大急ぎでマンション前まで車を移動し、救急隊員の方に声をかけ、部屋まで案内した。

私のベッドに横になっているお嬢。問いかけに返事するのも苦しいらしい。
立ち上がることはもう出来ず、担架にて家から運び出され、救急車に乗った。
私は後ろから着いて行った。

長い長い一日の始まり。

潰瘍か腸炎?と思っていたので、処置のあとバァの家で休んでいてもらって、私はこの病院から出勤するつもりで昼ドラのリーダーに「遅れるかも」と連絡していた。
でも、タイムリミットが近づいてもお嬢は救急処置室から出てくる気配が全くない。

・・・これはヤバイ?

嫌味タラタラ言われながらも、無理無理に休みを取ったところで看護師さんに呼ばれ診察室に呼び込まれた。

この痛みは胃腸関係ではなく、婦人科???

エコー写真を見せられ、説明を受けた。
左の卵巣が異常に腫れている。
腫瘍がある、とのこと。
この痛みに関してはこれからする点滴が済めば落ち着くから、後日MRIを撮って検査しましょう、と。
お嬢の痛がり様はとても見ていられない。その点滴で痛みさえ収まってくれるのなら。
1時間、また待った。

点滴が終わって車椅子で出て来たお嬢。激痛に丸まって自慢のロングヘアは貞子状態。
「全く痛みが引かないよぅ・・・」
顔には脂汗が浮かび、涙をこぼしながら歯をくいしばっている。尋常じゃない。

「紹介状を書きますから。すぐに○○病院に行って下さい!」
ここも地域の救急病院でかなり規模は大きいけれど、唯一産婦人科だけは通常の診察のみ、なので非常勤医師しかいない。
入院手術は出来ない状態。
予想される病気を考えたら緊急転院しなければならない。

お嬢を看護師さんと4人がかりで車に乗せた頃紹介状が発行され、それを握りしめて紹介された病院へ向かった。