今回は当ブログではじめてな蔵元についての記事です。
 愛知県半田市の蔵元『國盛』の中埜酒造様が運営する國盛酒の文化館に行きました。
 


 1972年まで使われていた酒蔵をそのまま博物館にしたみたいです。
 入館は無料(予約制)
 江戸時代から続く伝統的な酒造りに用いる道具が展示されており、酒造りについても学ぶことができます。






 半田運河は黒塗りの建物ばかり。重厚感たっぷり。
 ミツカングループの創業もこの地ですね。中埜酒造様とも関わりが深い大地主のひとつ中埜(なかの)家が起業したのだとか。




 
 こちらが國盛酒の文化館
 博物館なれど、蔵元らしく杉玉も飾られています。結構最近取り替えたっぽいですが、かすかに茶色がかっているかな?
 漆喰の壁とか趣たっぷりですね。あと申し訳ありませんが中の様子についての写真は自重。酒飲みにとって、酒蔵は神聖にして侵すべからず。
 


 知多のお酒ですが、江戸時代においては灘や伏見とも並び賞された日本酒の名産地でした。知多の日本酒を醸す仕込み水には麹や酵母の栄養になりやすいマグネシウムやカルシウム、塩分といったミネラルが含まれており、これは灘の宮水に共通する要素です。これは知多が海辺に近い環境であったり、縄文時代の貝塚が多く点在することが理由であると考えられております。
 尾州廻船は灘の樽廻船に比べてスピードと安全性に優れていた点からも江戸の庶民に喜ばれたみたいです。これらも一種の上方から船で江戸に下ることから灘や知多のお酒は"下り物"と言われており、そうでないお酒は"下らない"ものと言われていたそうです。取るに足らないものを指す"くだらない"という言葉の語原ですね。
 

 そしてドンピシャのタイミングで購入できたのが以下のお酒です。

 
 『新酒新米あらばしり』ですね。ブルーのボトルが特徴的ですが、ラベルはこれだけです。
 スペックは本醸造の生原酒のあらばしり。精米歩合65%の2017年9月製造。このお酒は新米新酒とあることから分かるように29BYのお酒だそうです。
 なかなかお目にかかる機会のないタイプのお酒ですね。最近では純米あるいは純米吟醸の生原酒ならよく見るのですが、本醸造スペックじゃ夏場における生貯蔵酒しか見ないですし。
 加えて度数19度とはかなり濃ゆいなぁ。攻めてきてます。これは面白そうです。
 
 さて、その味わいは……
 上立ち香は控えめですがかすかにバニラやミントのようなニュアンス。
 含むと、舌にピリッとした刺激を与えつつも、知多酒ならではのミネラル感が味を引き締め、酸味もからめてスパッと切れていきます。梨のような味わいも多少。ツルッとした滑らかな液性も感じられます。苦味や渋味もありません。
 あたかもそれは無駄のない刀の一振りの如しであり、雑味やストレスのない爽酒。残暑のまだある今の時期にピッタリなお酒でしたね。海苔とも相性がいい。やった!
 このスタイル、例えば『百春』とか『常山』にも似た感覚。要は辛口好きならたまらないお酒じゃなかろうかと。このピュアな酒質に対して刺激を加えるお酒が造れるなら、『常山』や『山法師』『刈穂』みたいな超辛口路線とかも面白そうな銘柄かもしれません。
 とはいえ、『國盛』にはクラシック路線は突き抜けて欲しいかな?でなきゃ僕の推し銘柄である『白老』と比べてしまうところがあるかもしれませんし。でもその辺評価するなら『國盛』最高スペックの高級酒『我逢人』の生酒とも比べなきゃならないからなぁ。
 



 燗にもつけてみます。ぬる燗で。
 舌に感じる刺激はマイルドかつワイドとなり、奥から砂糖菓子的な甘味が覗かせてきました。燗上がりするタイプだったとは。
 爽酒から一転ほっこりとしたお酒に。燗につけたほうが僕は好みかも。
 

 ちなみに博物館には『國盛』の純吟生原酒もありました。こちらは純粋に高いクオリティの美酒であり、ミネラル感と膨らみのある甘味が光りながらもダレることなく辛味で切れます。でもキレの良さとか独自性で見るなら本醸造のほうが良かったかな。
 まぁ知多に旅行する人でかつ日本酒好きなら半田市の『國盛』の蔵元に足を運ぶことをお勧めしたいですね。