今回のお酒は『米鶴(よねつる)』というお酒です。
去年の暮れ近くにふらっと立ち寄った居酒屋で飲んだ『米鶴』がたまらなく美味かったため――クリーミーな飲み口と味わいに濃厚さのなかにある米の旨味がたまらないお酒でした。調べてみると、近いのは生酛純米かな?――個人的に注目していた銘柄です。
で、その『米鶴』を飲んでみたく探すにしてもやたら銘柄があるため分からず、買おうか買わないかで悩んで今まで買えなかったという……それはいいでしょう。
しかし今回の『米鶴』はかなり冒険でして……
精米歩合 65%
アルコール分 17度
甘辛・濃淡 やや辛口・やや濃醇
杜氏 須貝智
日本酒好きな方なら、タイトルの時点で違和感に気付いた方も多いのでは無いでしょうか。
そう、去年のお酒なのです!
今日は2017年の6月となります。このお酒は2016年9月に作られています。27BYですかね。
今回のお酒はいわゆる「夏越し酒(なごしざけ)」と呼ばれるもので、春先に仕込んでから夏場に熟成させ、通常9月に出されるお酒です。秋のはじまり、夏の終わりを告げる風物詩ですよね。
それを夏の始まりに飲むというこの暴挙よ……
つまり、約1年熟成されているお酒と言えるでしょう。そんな代物をとある酒店の冷暗所で保管されてあったものを確認したため、怖いもの見たさに買ってみた次第。
変な色にはなってないようです。
では、季節はずれの味わいはどうでしょうか。
……これは意外、思ったより静かだなぁ。
上立ち香は精米歩合の割に明確な吟醸香、そしてファーストアタックは静謐とした味わい。酸味もしなやか。草っぽい香りやスモーキーな感じもわずかに感じられます。
第一印象で光るのは飲み口の良さで、ビロードのように滑らかでしなやか。うっすらと粘性というかとろみのようなものが出ていて、さながら京都の湯葉を思わせるほど。
飲み進めてみたところ、刹那、杏仁豆腐のようなシロップ的かつクリーミーな味わいが徐々に沸いて出てきました。
味わいは温度の変化による二段変速か!してやられた。しかも、唐辛子入りのカップ麺を食べているときにそれは顕著だったり。
カップ麺をアテにすることは割と多目です。
濃醇なれど、ダレないように辛味でしっかり切れてくれるんだよなぁ。ストーリーもちゃんと出来ています。
酒質はかなり安定していて、醇酒の見本ともいえる飲みやすいお酒ですね。
しかし、あのとき飲んだ『米鶴』にあらず。いつかの激ウマ美酒は幻だったのだろうか……この銘柄も色々な角度からアプローチしてみますかね。