今回のお酒はワイナリーのお酒です。
 『「ヌメロシス」サケ エロティック 生酛』です。





 これ、日本酒なんです。
 表ラベルにあるフランス語風の名称は『Sogga Père et Fils LE SAKÈ ÈROTIQUE NUMÈRO SIX(ソガ・ペール・エ・フィス・ル・サケ・エロティック・ヌメロ・シス)』
 長いです。長すぎます。『シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド』(ボルドーメドック格付け2級)じゃあるまいし、もう日本酒なのかどうか怪しくなるほどですねぇ(^_^;)
 
 『ソガ・ペール・エ・フィス』というのは小布施ワインのシリーズ名で、「ソガ 父と息子たち」という意味だとか。自社栽培と契約農家の蒲萄を用いたワインに使う銘柄だそうです。
 『サケ エロティック』と名付けられたのは、辛い恋慕や狂おしい恋愛を経た男女にしか分からない香りがあるからだとか。僕?そうねぇ……
 「ヌメロシス」とは「6番目」という意味で、協会6号酵母を使っていることから来ています。ちなみに1~7号と9号の協会酵母を用いているとのことで、他にもun(アン)、deux(ドゥ) trois(トロワ)~neuf(ヌフ)とあるとか。



 長野県産美山錦100%使用
 精米歩合 59%
 アルコール分 16度
 
 表記はされていませんが純米吟醸の生原酒。
 希少なので数は少ないかもしれませんが、他のお酒でしたら『新政colors 瑠璃(ラピス)』が最も近いイメージですね。



 『新政ラピス』は去年27BYを飲んだことがあります。
 まぁ美山錦と新政酵母使用、無添加かつ生酛の生原酒と共通している点が多いので近いのも無理はありませんけど。
 ブルゴーニュワイン的な思想って酒米のドメーヌ化のことですかね?だとしたら『仙禽』と同じ地平に立っているわけか。




 なんとコルクで栓してありました。日本酒でコルクというのは初めてですね。
 てか、どう考えてもワインです。本当にありがとうございました。







 ソムリエナイフでコルクを開けました。ちょっとズレましたがうまいこと抜栓。時々ワインも飲むこともありますのであって良かったです。
 


 
 ボトルも撫で肩のブルゴーニュ風だし、遠目からこの写真を見たらますますワインとしか思えないなぁ。見た目白ワインだから、モンラッシェでも飲んでる気分。
 では飲んでみます。
 
 
 …………すごい。
 久しぶりに鳥肌が立ちました。信じられないクオリティの作品。

 天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
 (柿本人麻呂/『万葉集』巻七(一〇六八)より)
 
 この和歌がイメージされました。
 クラっとするくらい上品な上立ち香、含むとその瞬間から酸味が突き抜けます。その酸味はシュワシュワと星のように煌めく綺麗な微炭酸と共に満天の夜空の如く広がりを見せます。
 そしてその奥から米の旨味を凝縮したとろりと濃醇な甘味がじわりと。夜空に昇る月のように主張してきます。
 甘味と酸味を苦味で引き締めるバランスのとれたスタイル。辛味や渋味で切れるというよりは、グーンと伸びて徐々に薄れていくイメージ。飲んだあとの余韻は長いのにも関わらず、大海を船が往くかのように爽快です。これより長い余韻のお酒は日本酒じゃあまり見ないなぁ。宇宙観のようなものさえ感じる。
 『新政ラピス』とは確かに似ているかもしれませんが、濃醇さと余韻の長さでは『ヌメロシス』のほうが勝っているかも。
 というか、『新政ラピス』も相当美味いのにそれらを勝るところがあるとかおかしいんですけど!『ヌメロシス』って『No.6』と同じような意味なのに……
  
 ブルゴーニュワインの思想が日本酒的なフィネスを演出したということか。
 稀少性もあいまって、一晩だけしか味わえぬアバンチュール。
 
 あまりにも贅沢だなぁ。このクオリティを1,700円で買えること自体がそもそも可笑しい。チップ払えるならチップ払うクオリティ。最早コスパが云々の次元じゃないよこれ。
 
 でも、世界にも通用する一流のワインを作らんとしているワイナリーがモノ作りに妥協なんてまず無いだろうしなぁ。日本酒と同じ造りであっても「キリストの血」足り得んと、たとえ趣味でも拘り抜く姿勢が、こうした傑作を生み出したのかもしれません。


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