では、そもそもなぜワニが崇拝されたのでしょうか?
元々、砂丘や灌漑用運河、ファイユーム湖、ナイル河岸でワニが日光浴をする場面は、古代エジプトで一般的だったようです。ワニは古代エジプト人にとって身近な存在だったのかもしれません。
そして、ワニの恐るべき力と獰猛さは古代エジプトの人々の心をひきつけ、畏敬の心をもたせました。ワニの強さが、エジプト王と関連づけられたくらいです。
🐱ワニが描かれた呪術的なつえ
先王朝時代(紀元前5300- 3000年頃)以来、ワニは人々によって描かれ続けました。例えば、幼児を守る呪術道具にワニが描かれています。中王国時代の呪術的なつえ(メトロポリタン博物館所蔵で、紀元前1850~1640年頃の物)です。ワニを描いたのは、ワニの持つ強さを呪術的にあやかるためだったと考えられます。
🐱頭部がワニのアメムト
一方、ワニの恐れを強調したものは、頭部がワニのアメムトという怪物です。アメムトは、道徳に反した生き方をした死者の心臓を食べてしまいます。具体的には、死者の審判の告白後、心臓の計量で死者の心臓(=死者の真の性格が記憶されている)とマアト(=真理、道徳)とつり合わなかったら、その心臓はマアトの羽根より重くなり、アメムトに心臓を食べられる結末になっています。
このように、ワニは力を与えてくれる存在でもあり、恐怖のシンボルでもあったことがわかります😃。
参考にした主な文献
ジョージ・ハート著、近藤二郎監訳、鈴木八司訳『古代の神と王の小辞典2 エジプトの神々』學藝書林、2011年。
マンフレート・ルルカー著、山下主一郎訳『エジプト神話シンボル事典』大修館書店、1996年。
Wilkinson, T. (2005). The Thames & Hudson Dictionary of Ancient Egypt. London: Thames
& Hudson.
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