🐱「ナイルの土」を意味し、カフと読むヒエログリフ。
古代エジプトの土とは。
「エジプトの土壌は泥と、ナイルがエチオピアから運んできた沖積土とから成り立っているので、黒色で脆いのであるが、リビアの土はむしろ赤味を帯びて砂質であり、シリアでは土が粘土質で石が多い事実をわれわれは知っているのである。」
(ヘロドトス著、松平千秋訳『歴史』上巻、岩波書店、1978年、168頁(2巻12))
リビアはエジプトの西側にあり、シリアは東地中海沿岸にあります。ナイル河の増水は恵みの増水でした。なぜなら、エジプトのような乾燥地帯に水を与え、ナイル河の上流から有機物を含んだ肥沃な黒土(ナイル・シルト)を耕地に与えたからです。ちなみに、この黒土から最初に出てきたのがスカラベ(フンコロガシ)だったようです。
🐱「大地」や「国」を意味し、タと読むヒエログリフ。
「ナイルが国土に氾濫すると、水上に現れているのは町々だけとなり、その様はエーゲ海上に浮かぶ島嶼さながらである。すなわちエジプトの全土は大海と化し、町々だけが水上に現れているのである。」
(ヘロドトス著、松平千秋訳『歴史』上巻、岩波書店、1978年、219頁(2巻97))
ナイル河の増水は「氾濫」とも言いますが、実際にはゆっくり水量が増加して水位が上がり、河幅も拡大する現象でした。
現在は、ナイル河上流にアスワン・ハイダムが建設されて水量が調節できるようになったため、ナイル河の増水は起こらず、代わりに人工的に灌漑を行なっているようです。
参考にした主な文献
近藤二郎『エジプトの考古学』同成社、2012年。
高宮いづみ『古代エジプト文明社会の形成』京都大学学術出版会、2006年。
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