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今宵は第1番をネーメ・ヤルヴィ指揮 ロンドン交響楽団の演奏('87年5月16~18日録音、セント・ジュード教会、ロンドンにて収録、CHANDOS輸入盤)で。
録音魔のヤルヴィがドイツものにも強い指揮者である事を伺わせるブラームス。
まず、録音が素晴らしい。ブラームスの理想的な響きが収録された優秀録音だと思う。教会のたっぷりとした残響がストリングスに芳醇さと重厚感を与え、木管や金管楽器とのブレンド感も実にナチュラル。どことなく漂うほの暗さがブラームス作品(特にこの曲には)にぴったりだ。
ロンドンはドイツのような残響の美しいコンサートホールに恵まれていないという現実もあるが、地元CHANDOSレーベルだけにロケーションには熟知しているようだ。ちなみにセントジュード教会のページを見たら、やはりここでは数々のレコーディングが行われているようだ。

さて、ヤルヴィの指揮(録音当時50歳)はどうか?全体的に早めのテンポで進む。1楽章、ストリングスとティンパニが奏でる序奏は重厚ながらも、変な重々しさはなく、常に音楽が前に進む推進力がある。
これは他のアルバムも含めてヤルヴィの指揮振りから感じられる(ブログでもショスタコーヴィッチの「祝典序曲」デトロイト交響楽団との「クリスマス・アルバム」をエントリー)事で、自分にとってヤルヴィに好印象を持つ理由の一つになっている。

2楽章冒頭オーボエの、実に伸びやかな音、後半のヴァイオリンの味わいのあるソロ等、ロンドン響の名手達の豊かな技巧と音楽性が聴けるのも嬉しい。ちなみにヴァイオリンは'79年にハレ管弦楽団より移籍したコンサート・マスターのマイケル・デイヴィスが担当している。同時期にロンドン・フィルのコンサートマスターだったデイヴィッド・ノーランと良きライバルのようにも思える(^^)

クラリネットのソロで始まる3楽章はブラームスの交響曲の中でも個人的にとても好きな楽章。癒されたい時、3楽章だけを単独で聴く事がよくある。ストリングスと木管、金管の掛け合いが源泉から沸き上がってくる温水のようで、体(心)が温まり芯からポカポカになるような気がする。もしブラームスが今生きていたら、癒しの作曲家としても大成したかもしれない。

4楽章はストリングスが奏でる有名な第一主題に叙情性が感じられるし、終結部に向かっての盛り上がりも素晴らしい。コーダでは金管を強奏させている所にもヤルヴィならではの熱っぽさが感じられ、好感がもてる。

音楽が停滞せず、常に推進力を持ったテンポ感は、ベートーヴェンの交響曲全曲の公演で日本でも話題をさらった長男のパーヴォ・ヤルヴィにも受け継がれているようだ。
録音魔と言われながらも父ネーメのベートーヴェン録音はほとんどないのが残念。彼のベートーヴェンも聴いてみたいものだ。