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これまで本ブログでエントリーしてきたロンドン響による映画・TVサントラ選の第5弾として、現在公開中の映画、「シンデレラ」のサントラを。作曲は以前より気になっていたパトリック・ドイル(b.1953)、演奏はロンドン交響楽団のコンビ。オケ好きの自分にとっては最近のロンドン響のサントラでの活躍ぶりを窺えるアルバムとしても好適だ。
ロンドン響のサントラというと、映画「スターウォーズ」や「スーパーマン」など、スペクタクルなものが多いが、今回はディズニー作品として知られるシンデレラのストーリー性がうまく反映された、ハートウォーミングなアルバムに仕上がっている。本作品のテーマである、“勇気と優しさ”がパトリック・ドイルの視点で具現化されたオーケストレーションが見事だ。
例えば、舞踏会の場面で流れる「ラ・ヴァルス・ドゥ・ラムール」。優雅なワルツだが、決して音楽が主張しすぎず、映像にそっとより沿った心温まる曲だ。また期限の時間が迫り、城を出て猛スピードで駆けだすシーンで流れる「パンプキン・パーシュート」も、場の盛り上げに徹したスリル感ある曲で、劇伴音楽の原点を見るような気がした。

全体的にメロディアスで、時にスペクタクルな一面もあり、サントラ単体としても聴きやすい点は、ジョン・ウィリアムズ作品を想起させる。実際、人気映画のハリー・ポッターシリーズで、パトリック・ドイルが「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」を担当しているのも、偶然ではないかもしれない。今回のシンデレラを機に、パトリック・ドイルがアカデミー賞にもノミネートされた映画「いつか晴れた日に」(1995年)、「ハムレット」(1996年)のサントラを聴いてみたが、まさに今回のシンデレラにつながる要素を持っており、大いに納得できた。

パトリック・ドイルはスコットランド出身で現在62歳、作曲家として十分なキャリアをもつベテランだ。こんなに素晴らしい作曲家がいたにも関わらず、これまでほとんどノーマークだったのが今更ながら意外だった。テクニカルな演出よりも作品のストーリー性を大事にした今回のシンデレラのサントラには大いに感動したし、その中にパトリック・ドイルのヒューマンな作風も読み取れた。これからも彼の新たな作品にも注目していきたい。