2020年11月は山下達郎・竹内まりや夫妻のリリースラッシュという嬉しい月となった。まず、竹内まりやが11月18日に「souvenir the movie ~MARIYA TAKEUCHI Theater Live~」、その1週間後に山下達郎が過去アルバムの最新リマスター盤を発売。竹内まりやはライヴ映像の初パッケージソフト化、山下達郎は1980年代後半の2つの名盤「ポケット・ミュージック」「僕の中の少年」の2020年最新リマスターによる再発売というもの。再発売に際しては恒例となっているボーナストラックがファンにとっては関心の高いところ。2枚のアルバムの購入を記念して、オリジナルの発売順に各々のアルバムの感想を綴っておきたい。
アルバム「ポケット・ミュージック」(ジャケット画像上)
1. 土曜日の恋人
2. ポケット・ミュージック
3. MERMAID
4. 十字路
5. メロディー、君の為に
6. THE WAR SONG
7. シャンプー
8. ムーンライト
9. LADY BLUE
10. 風の回廊(コリドー)
[Bonus Tracks]
11. 土曜日の恋人(1985 ORIGINAL SINGLE MIX)
12. MERMAID(1985 ORIGINAL SINGLE MIX)
13. MY BABY QUEEN -マイ・ベイビー・クイーン-
14. 土曜日の恋人(1986 ALBUM MIX)
15. LADY BLUE(LIVE VERSION)
16. 土曜日の恋人 (ORIGINAL KARAOKE)
オリジナルは1986年に発売された山下達郎通算8作目のアルバム。1991年に一度リミックス盤がリリースされているので、今回は約30年ぶりの再発となる。「僕の中の少年」と共に、1980年代後半当時のレコーディング環境において、アナログからデジタルへの移行期にあたり、アルバム制作に様々な苦労を強いられていたことが今回のアルバムのライナーノーツに4ページに渡って綴られていることからも窺える。
具体的には当時のデジタルレコーダーで録音された音にグルーヴ・音圧が不足していたことに不満が多かったようだ。そんな不満はその後のリマスタリング技術の向上によって徐々に解消されてゆく。
そんな苦労を感じる一方で、ライナーノーツを読んで、当時の達郎の制作ポリシーに共感するところもあった。それはドラムとベースはなるべく生楽器を起用していた点。当時の制作現場はドラムやベースをコンピュータのドラムマシンやシンセベースで代用するのが主流だったが、達郎はライヴでのパフォーマンスを重視していたからだという。音楽にはグルーヴ感が必要で、グルーヴを創り出す源はドラムやベースといった生楽器が生み出しているという点でも納得がいく。「ポケット・ミュージック」では、10曲中7曲が生ドラム、6曲が生ベースで制作されているというが、デジタルとアナログのバランスを見極めながら、双方を共存させているのは見事だ。例えば彼にとって初のデジタルレコーディングとなった「風の回廊(コリドー)」はドラムとテナーサックス以外は達郎一人でのマニピュレート(コンピュータープログラミング、ギター、パーカッション、バックコーラス)によるもの。一方で、例えば「シャンプー」はサックス以外は達郎、「ムーンライト」は 、達郎オンリーでの完全マニピュレートとなっている。
「オレたちひょうきん族」のエンディングテーマ曲にもなった「土曜日の恋人」は以前からお気に入りだったが、今回久しぶりに聴いて新たに注目したのは「LADY BLUE」。英語の作詞はアラン・オディが担当しており、1984年のアルバム「BIG WAVE」でも多くの名曲を共作しているだけに、ここで聴かせるバラードも極上の出来。ボーナストラックには「LADY BLUE」の1986年のライヴ音源が収録(1991年のリミックス盤にも収録)されており、当時のライヴパフォーマンスでの達郎の没入感のある歌声に浸ることができる。また、今回初収録された「土曜日の恋人」のオリジナルカラオケ音源も嬉しい。この時代のアルバムはストーリーを持っており、曲の配列や流れがとても重要、と締めくくられていたが、これはアルバムのサブスクを解禁しない一つの理由にもなっていると思った。
アルバム「僕の中の少年」(ジャケット画像下)
1. 新(ネオ)・東京ラプソディー
2. GET BACK IN LOVE
3. The Girl In White
4. 寒い夏
5. 踊ろよ、フィッシュ
6. ルミネッセンス
7. マーマレイド・グッドバイ
8. 蒼氓(そうぼう)
9. 僕の中の少年
[Bonus Tracks]
10. ゲット・バック・イン・ラブ (SINGLE VERSION)
11. FIRST LUCK ~初めての幸運(しあわせ)~
12. 踊ろよ、フィッシュ (ORIGINAL SINGLE VERSION)
13. 踊ろよ、フィッシュ (TREASURES VERSION)
14. THE GIRL IN WHITE (EARLY VERSION)
15. 新(ネオ)・東京ラプソディー (ORIGINAL KARAOKE)
16. マーマレイド・グッドバイ (ORIGINAL KARAOKE)
オリジナルは1988年に発売された山下達郎通算9作目のアルバム。1曲目の「新(ネオ)・東京ラプソディー」と2曲目「GET BACK IN LOVE」は昔から好きな曲だった。手元にデジパックで発売された初回盤があるので聴き比べてみたが、2020年リマスター盤は初回盤よりもボリュームレベルが一段階上がり、音圧が明らかに高くなったのを感じる。例えば「新(ネオ)・東京ラプソディー」でのトランペットのソロは実に鮮烈な音で鳴り響く。(ジョン・ファディスのハイノートがまた素晴らしい!)少なくともアルバムが生まれて30年以上が経過している音とは思えない。とはいえ、デジパック仕様だった初回盤も貴重で、共に愛聴盤となりそうだ。
本アルバムでも、コンピュータプログラミングが全9曲中7曲が達郎自身によってマニピュレートされている。その中には過去、ライヴでも取り上げられた「ゲット・バック・イン・ラブ」とライヴでは定番曲となっている名曲「蒼氓(そうぼう)」が含まれている。「The Girl In White」「ルミネッセンス」「僕の中の少年」の3曲はドラムマシンの音で生ドラムではない為にグルーヴ的にはやや乏しさをが感じるが、それも達郎が創作過程で出した結論だと思えば納得がいく。
1988年当時、達郎は35歳。「ポケット・ミュージック」と同様に制作面では様々な葛藤があったはずだが、ライナーノーツによれば、デジタル機材への移行に加え、"夏だ!海だ!タツローだ!"からの脱却と、創作活動がより内省的な志向を高める時期でもあったようだ。当時の世の中はバブル景気。そんな中にあっても市井の人と共に"生き続けることの意味"を問うた「蒼氓(そうぼう)」のような作品もあり、シンガソングライターとしての成熟が感じられる。
ボーナストラックは計7曲収録。「FIRST LUCK ~初めての幸運(しあわせ)~」ではハモンドオルガンも達郎が担当するこだわりぶり!また、「新(ネオ)・東京ラプソディー」のオリジナルカラオケ音源ではコーダでの東京ラプソディーのコラージュ部分もはっきりと聴き取れるのが嬉しい。
「ポケット・ミュージック」「僕の中の少年」共に、山下達郎が30代で生み出したアルバムが今も多くの人に愛されていることを喜ぶと共に、アーティスト本人が納得のいく高いクオリティで今回の2020年最新リマスター盤として蘇ってくれたことに感謝したい。山下達郎ソングよ、永遠なれ!
【こだクラ過去ブログ/山下達郎シングル&アルバム関連】
■2枚のシングルに3曲収録!山下達郎2019年ツアーライヴ音源~「サウスバウンド♯9」「ベラ・ノッテ」「煙が目にしみる」
■再発!山下達郎「メロディーズ」「シーズンズ・グリーティングス」~ファン感涙のボーナストラックも収録!
■山下達郎ソロデビュー35周年記念! ベストアルバム「OPUS」
■祝!6年ぶりニューアルバム!山下達郎 「Ray Of Hope」
■震災復興祈願~最新ディスクより 山下達郎「愛してるって言えなくたって」
■最新ディスクより~山下達郎ニューシングル「希望という名の光」、バラード3部作の最終章へ
■「アトムの子」の最新ツアーライヴ音源も収録!~山下達郎のニューシングル『僕らの夏の夢/ミューズ』
■山下達郎久々のニューシングル発売!~「ずっと一緒さ」他で聴かせる極上のバラード
アルバム「ポケット・ミュージック」(ジャケット画像上)
1. 土曜日の恋人
2. ポケット・ミュージック
3. MERMAID
4. 十字路
5. メロディー、君の為に
6. THE WAR SONG
7. シャンプー
8. ムーンライト
9. LADY BLUE
10. 風の回廊(コリドー)
[Bonus Tracks]
11. 土曜日の恋人(1985 ORIGINAL SINGLE MIX)
12. MERMAID(1985 ORIGINAL SINGLE MIX)
13. MY BABY QUEEN -マイ・ベイビー・クイーン-
14. 土曜日の恋人(1986 ALBUM MIX)
15. LADY BLUE(LIVE VERSION)
16. 土曜日の恋人 (ORIGINAL KARAOKE)
オリジナルは1986年に発売された山下達郎通算8作目のアルバム。1991年に一度リミックス盤がリリースされているので、今回は約30年ぶりの再発となる。「僕の中の少年」と共に、1980年代後半当時のレコーディング環境において、アナログからデジタルへの移行期にあたり、アルバム制作に様々な苦労を強いられていたことが今回のアルバムのライナーノーツに4ページに渡って綴られていることからも窺える。
具体的には当時のデジタルレコーダーで録音された音にグルーヴ・音圧が不足していたことに不満が多かったようだ。そんな不満はその後のリマスタリング技術の向上によって徐々に解消されてゆく。
そんな苦労を感じる一方で、ライナーノーツを読んで、当時の達郎の制作ポリシーに共感するところもあった。それはドラムとベースはなるべく生楽器を起用していた点。当時の制作現場はドラムやベースをコンピュータのドラムマシンやシンセベースで代用するのが主流だったが、達郎はライヴでのパフォーマンスを重視していたからだという。音楽にはグルーヴ感が必要で、グルーヴを創り出す源はドラムやベースといった生楽器が生み出しているという点でも納得がいく。「ポケット・ミュージック」では、10曲中7曲が生ドラム、6曲が生ベースで制作されているというが、デジタルとアナログのバランスを見極めながら、双方を共存させているのは見事だ。例えば彼にとって初のデジタルレコーディングとなった「風の回廊(コリドー)」はドラムとテナーサックス以外は達郎一人でのマニピュレート(コンピュータープログラミング、ギター、パーカッション、バックコーラス)によるもの。一方で、例えば「シャンプー」はサックス以外は達郎、「ムーンライト」は 、達郎オンリーでの完全マニピュレートとなっている。
「オレたちひょうきん族」のエンディングテーマ曲にもなった「土曜日の恋人」は以前からお気に入りだったが、今回久しぶりに聴いて新たに注目したのは「LADY BLUE」。英語の作詞はアラン・オディが担当しており、1984年のアルバム「BIG WAVE」でも多くの名曲を共作しているだけに、ここで聴かせるバラードも極上の出来。ボーナストラックには「LADY BLUE」の1986年のライヴ音源が収録(1991年のリミックス盤にも収録)されており、当時のライヴパフォーマンスでの達郎の没入感のある歌声に浸ることができる。また、今回初収録された「土曜日の恋人」のオリジナルカラオケ音源も嬉しい。この時代のアルバムはストーリーを持っており、曲の配列や流れがとても重要、と締めくくられていたが、これはアルバムのサブスクを解禁しない一つの理由にもなっていると思った。
アルバム「僕の中の少年」(ジャケット画像下)
1. 新(ネオ)・東京ラプソディー
2. GET BACK IN LOVE
3. The Girl In White
4. 寒い夏
5. 踊ろよ、フィッシュ
6. ルミネッセンス
7. マーマレイド・グッドバイ
8. 蒼氓(そうぼう)
9. 僕の中の少年
[Bonus Tracks]
10. ゲット・バック・イン・ラブ (SINGLE VERSION)
11. FIRST LUCK ~初めての幸運(しあわせ)~
12. 踊ろよ、フィッシュ (ORIGINAL SINGLE VERSION)
13. 踊ろよ、フィッシュ (TREASURES VERSION)
14. THE GIRL IN WHITE (EARLY VERSION)
15. 新(ネオ)・東京ラプソディー (ORIGINAL KARAOKE)
16. マーマレイド・グッドバイ (ORIGINAL KARAOKE)
オリジナルは1988年に発売された山下達郎通算9作目のアルバム。1曲目の「新(ネオ)・東京ラプソディー」と2曲目「GET BACK IN LOVE」は昔から好きな曲だった。手元にデジパックで発売された初回盤があるので聴き比べてみたが、2020年リマスター盤は初回盤よりもボリュームレベルが一段階上がり、音圧が明らかに高くなったのを感じる。例えば「新(ネオ)・東京ラプソディー」でのトランペットのソロは実に鮮烈な音で鳴り響く。(ジョン・ファディスのハイノートがまた素晴らしい!)少なくともアルバムが生まれて30年以上が経過している音とは思えない。とはいえ、デジパック仕様だった初回盤も貴重で、共に愛聴盤となりそうだ。
本アルバムでも、コンピュータプログラミングが全9曲中7曲が達郎自身によってマニピュレートされている。その中には過去、ライヴでも取り上げられた「ゲット・バック・イン・ラブ」とライヴでは定番曲となっている名曲「蒼氓(そうぼう)」が含まれている。「The Girl In White」「ルミネッセンス」「僕の中の少年」の3曲はドラムマシンの音で生ドラムではない為にグルーヴ的にはやや乏しさをが感じるが、それも達郎が創作過程で出した結論だと思えば納得がいく。
1988年当時、達郎は35歳。「ポケット・ミュージック」と同様に制作面では様々な葛藤があったはずだが、ライナーノーツによれば、デジタル機材への移行に加え、"夏だ!海だ!タツローだ!"からの脱却と、創作活動がより内省的な志向を高める時期でもあったようだ。当時の世の中はバブル景気。そんな中にあっても市井の人と共に"生き続けることの意味"を問うた「蒼氓(そうぼう)」のような作品もあり、シンガソングライターとしての成熟が感じられる。
ボーナストラックは計7曲収録。「FIRST LUCK ~初めての幸運(しあわせ)~」ではハモンドオルガンも達郎が担当するこだわりぶり!また、「新(ネオ)・東京ラプソディー」のオリジナルカラオケ音源ではコーダでの東京ラプソディーのコラージュ部分もはっきりと聴き取れるのが嬉しい。
「ポケット・ミュージック」「僕の中の少年」共に、山下達郎が30代で生み出したアルバムが今も多くの人に愛されていることを喜ぶと共に、アーティスト本人が納得のいく高いクオリティで今回の2020年最新リマスター盤として蘇ってくれたことに感謝したい。山下達郎ソングよ、永遠なれ!
【こだクラ過去ブログ/山下達郎シングル&アルバム関連】
■2枚のシングルに3曲収録!山下達郎2019年ツアーライヴ音源~「サウスバウンド♯9」「ベラ・ノッテ」「煙が目にしみる」
■再発!山下達郎「メロディーズ」「シーズンズ・グリーティングス」~ファン感涙のボーナストラックも収録!
■山下達郎ソロデビュー35周年記念! ベストアルバム「OPUS」
■祝!6年ぶりニューアルバム!山下達郎 「Ray Of Hope」
■震災復興祈願~最新ディスクより 山下達郎「愛してるって言えなくたって」
■最新ディスクより~山下達郎ニューシングル「希望という名の光」、バラード3部作の最終章へ
■「アトムの子」の最新ツアーライヴ音源も収録!~山下達郎のニューシングル『僕らの夏の夢/ミューズ』
■山下達郎久々のニューシングル発売!~「ずっと一緒さ」他で聴かせる極上のバラード