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山下達郎の1984~2012年までの約四半世紀に渡る過去のライヴツアーの模様が、ダイジェストで味わえるという一週間限定のシアター・ライヴ「PERFORMANCE1984-2012」を観た(2012年8月31日、横浜ブルグにて)。今回の上映は、9月にベストアルバム「OPUS」発売に当たっての事前プロモーションの一環だが、昨今のシアター環境の向上が、山下達郎自身のライヴ映像公開への後押しにもなったようだ。DVDやブルーレイといった映像メディアでなく、敢えてシアターで期間限定での公開に絞ったのは、人々が集う場での大衆性にこだわる山下達郎ならではの意図なのかもしれない。1990年頃から達郎サウンドに傾倒し始めた自分にとって、これまで音源でしか聴けなかった1980年代のライヴを映像で見れたのは実に貴重な体験となった。

映像の優れた点は、アーティストの声だけでなく表情も読み取れる事。ハイトーンボイスは今も昔も健在な山下達郎だが、特に1986年のライヴ映像の当時はアルバム「ポケット・ミュージック」のリリースで勢いに乗っていた時期。達郎のルーツを改めて探れたような気がする。
映像といえば外見の変化も気になる所。この約四半世紀、メタボの誘惑?にも屈せず、スリムな体型を維持している所に、日々の健康維持への配慮が窺われる。また、ギターテクニックも年を重ねて益々熟練しているようだ。山下達郎自身、ツアー映像で、「体は老いても、心は老いない=NEVER GROW OLD」の精神を貫いているというMCも挿入されており、彼の職人(アルチザン)としての生き方が垣間見える。

今回のシアター上映で、個人的に印象に残った曲を敢えて挙げるとしたら、「煙が目にしみる」「さよなら夏の日」「ずっと一緒さ」の3曲だろう。ギターを片手に歌われるアップテンポな達郎サウンドはもちろん好きなのだが、両手でマイクを握り締め、祈るようにバラードを歌い上げる達郎の姿に、当時のライヴでの感動がオーバーラップし、今回も涙腺がゆるんでしまった。観客は中年層が多かったが、自分と同世代と思われる層も多く、上映後は自然と拍手が沸き起こった。今回、シアター上映という形で公開に踏み切った山下達郎の心意気に感謝。願わくば1970年代の映像もどこかで期待したいものだ。

歳を重ねて益々盛んな活動、そして彼ならではのショーマンシップの精神に、山下達郎と同時代人で良かった、一ファンで良かったと思える週末となった。