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リー・ホールドリッジのサントラに引き続き、今度はロンドン響によるテレビ作品のサントラ集(ジャケット画像:左)を。「ITV THEME」(1987年頃録音、PICKWICK海外盤)と題されたこのアルバムは国営のBBCに対する英国最大の民間放送局、ITVの娯楽番組のテーマ音楽が集められたアルバム。ポイントは、ITVの最大のヒット番組といっても過言ではないバリー・グレイ(1908-1984)作曲の「サンダーバード」のテーマ曲が収録されている点。こだクラでは以前、ロイヤル・フィル盤の「サンダーバード」(ジャケット画像:右)をエントリーした事があるが、オリジナルサントラはロンドン響が演奏していただけに、このアルバムの存在意義は大きい。

ロイヤル・フィル盤とロイヤル・フィル盤との聴き比べでは、イントロから各盤とも微妙に異なっているのが興味深い。有名なテーマ部分はロイヤル・フィル盤ではトロンボーン・セクションのみが奏でているのに対し(トランペット・セクションはバックの刻みを担当)、ロンドン響盤はトランペットとトロンボーンの双方となっており、勇壮さはロンドン響盤が勝っている。また、ロイヤル・フィル盤は1分14秒と演奏時間が短いのに対し、ロンドン響盤は木管セクションによる中間部が含めて2分55秒と倍以上あるだけに、ボリュームという点での聴き応えもある。

指揮がスタンリー・ブラックであるのもポイント。彼は映画音楽やイージーリスニングの世界で著名な指揮者だけに、こういったポピュラー曲はお手のものなのだろう。スタンリー・ブラック&ロンドン響の共演は、以前、ルロイ・アンダーソンの「トランペット吹きの休日」でエントリーしている。サンダーバード以外は知らない収録曲が並ぶが、他の曲も一聴して親しみやすいものばかりで、いずれもお気に入りとなった。全体の収録曲は以外の通り。

①Thunderbirds
②The Professionals / The Avengers / The New Advengers
③Jewel In The Crown
④Upstairs Downstairs
⑤The Duchess Of Duke Street
⑥Black Beauty (Galloping Home)
⑦Minder (I Could Be So Good For You) / The Two Of Us / Happy Days
⑧Tales Of The Unexpected
⑨Coronation Street
⑩The Sweeney
⑪The Bill (Overkill)
⑫Hannay
⑬World Of Sport / Aztec Gold / Carmen To The Ring / Saint And Greavsie
⑭Hill Street Blues / L.A. Law / Hooper Man / The 'A' Team
⑮This Is Your Life
⑯Highway / Blockbusters


一部、感想を簡単に綴ってみたい。
②「The Professionals / The Avengers / The New Advengers」はオケと奏でられるエレキギターのどこかレトロな音色が1970年代の作品の空気を感じさせる。③「Jewel In The Crown」(王冠の宝石)は自分にとって本アルバムを通じて知った収穫の一曲で、サー・ウィリアム・ウォルトン的な英国風サウンドを聴かせてくれる。タイトルに「王冠」と付くのも、そんな共通点だろうか。
一方、④「Upstairs Downstairs」では、マーチやワルツの要素が入り混じっており、ユニーク。「Black Beauty (Galloping Home) 」はホルン・セクションが吹きならすテーマが豪快。
⑨「Coronation Street」や⑭「Hill Street Blues / L.A. Law / Hooper Man / The 'A' Team」はトランペット・ソロに注目。ソロ担当はモーリス・マーフィーだろうか、Jazzyな雰囲気が漂っており、彼の才能の豊かさが本サントラでも堪能できるのが嬉しい。⑩「The Sweeney」は、ビートルズの名作、「エリナー・リグビー」的なリズム展開が面白かった。
⑫「Hannay」 もウォルトン的作風。⑬World Of Sport / Aztec Gold / Carmen To The Ring / Saint And Greavsieは、「カルメン」や「星条旗よ永遠なれ」といったメロディを用いたメドレー構成で、聴き手を飽きさせない。