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秋の夜長にはジャズ、それも女声によるジャズ・ヴォーカルがよく似合う。ジェーン・モンハイト(Jane Monheit)が歌う「ムーン・リバー」はそんな一曲。最初に聴いた時の衝撃は大きかった。ピアノとストリングスのしっとりした前奏に続いて切々と歌い上げるモンハイトのムーン・リヴァー。どこか哀愁すら漂う彼女の歌声に、一気に惹き付けられた。実は当初、レンタル屋で借りたジャズ・ヴォーカルのコンピレーションアルバムを聴いてモンハイトの名前を知ったのだが、その後、この曲が収録された単独アルバム「Surrender」(2007年作・Concord Records海外盤・ジャケット画像左)を買い直し、改めてモンハイトの歌声をじっくり聴きたいと思うようになった。

モンハイトは、リリース当時30歳のニューヨーク出身のヴォーカリスト(b.1977)で、1998年度のセレモニアス・モンク・ジャズ・コンペティションで2位受賞という経歴を持つ実力派。若手ながらも、既に充分な貫禄があり、どこか枯れた味わいがあるのも、この曲にはプラスに作用している。これまでムーン・リバーといえばヘンリー・マンシーニ作曲の代表作といった程度の捉え方だったが、このスタンダード・ナンバーがこれほどまでに奥深く、また、味わいのある名曲だという事をモンハイトの歌声を通じて改めて教えてくれたような気がした。全体を通じ、歌詞のないヴォカリーズが随所に用いられているのも、この曲の印象を高めており、声がまさに楽器としての機能も担っている。また、バックがピアノとストリングスによる絶妙なオケアレンジとなっている事もポイント(指揮・編曲:Jorge Calandrelli)、モンハイトの歌声がアコースティック・サウンドによってやさしく包み込まれ、この曲の陰影がより表出された仕上がりとなっている。オケはハリウッドで録音されていることもあって、優秀録音である事も特筆しておきたい。

幸いにもYou Tube上で音源がアップされていたので紹介したい。
【ジェーン・モンハイト/ムーン・リバー】
http://www.youtube.com/watch?v=BJn6PzAdbI4&feature=related

なお、本アルバムには他にスティーヴィー・ワンダーの「Overjoyed」(しかもボサノヴァ風!)も収録されており、他の名曲も味わえる嬉しい仕様となっている。秋の夜長、まだしばらくモンハイトのムーン・リバーに浸っていられそうだ。