プラハでは数多くの教会で、主に観光客向けのクラシックコンサートが数多く開かれているが、やはり、ルドルフィヌムか、もう一つ、通称「スメタナ・ホール」(画像:上)として愛されている「市民会館」で聴きたいものだ。そんなヨーロッパ滞在最終日の夜に、スメタナ・ホールでクラシックコンサートを聴くチャンスに恵まれた。画像は外の通りから見たスメタナ・ホールの外観。実に美しい。
街中で配布されていたチラシ(画像②)で知ったその公演で演奏するオケは「プラハ・ロイヤル・オーケストラ」。まるでフル編成のような名称のオケだが、室内楽中心のプログラムだったので、チケット売場の販売員に尋ねてみると、10名編成の室内オケのようだ。帰国後にHPで調べてみると、1997年に結成されており、国立劇場や国立オペラ座、プラハ響、チェコ・フィルなどのメンバーが含まれているという。プラハは観光向けのクラシック公演が実に多かった。
(画像②)
当夜のプログラムは以下の通り。
パッヘルベル:カノン
モーツァルト:ディベルティメント
ヴィヴァルディ:「四季」
ドボルザークやスメタナといった自国の作曲家のプラグラミングがなかったのは残念だが、いずれも名曲揃い。チケットはかなりいいお値段だったので、最安値(とはいっても日本円で約3500円相当)のチケットを購入。一階席後方の自由席だが、スメタナ・ホールの響きを実際に生で堪能できる事が何より楽しみだった。
このホールは、チェコNo.2のオケ、プラハ交響楽団(1934年設立)の本拠地でもあるが、何と言っても毎年「プラハの春」音楽祭で使用されるホールとして有名。1990年には、巨匠ラファエル・クーベリック (1914-1996)がこのホールで42年ぶりにチェコ・フィルと共演し、オープニングコンサートで「我が祖国」を指揮するという歴史的な公演が行われただけに、感慨深い。日本では、ルドルフィヌムと同様、08年の「のだめカンタービレの新春スペシャル」で、千秋がオケを振ったシーンを収録したホールとしての記憶の方が新しいかもしれない。その際の共演オケはプラハ放送交響楽団(1926年設立)で、ブラームスの交響曲第1番より第4楽章が収録された。
開演は20時と遅いが、ヨーロッパの音楽会ではこれが通常の時間帯。事前に軽い夕食を済ませ、ホールへ。ステージ正面にはパイプオルガンが据えられ、「SMETANA」の文字も見える。その字体が何となくかわいらしく、愛着がわいてくる。
彫刻が施された豪華な内装(画像③)と抜群の音響。後方の座席でありながら、10名の奏者によるサウンドが残響と共にしっかりと耳に届いてくる。“まさに、音は生き物だ”と感じた、97年に訪れたロンドンのセントポール大聖堂での感動を思い出す。ある意味、教会での響きに近い印象。日本では、このような教会型の残響を体感できるコンサートホールは少ない。それは音響学的な見地からクラシック専用のコンサートホールとして建設される日本と、教会文化圏の中で生まれたヨーロッパとの、歴史的な生い立ちの違いだろう。
スメタナホールのような響きを自宅でも再現したい・・・この先のオーディオ・ライフで一つの目標になったのは間違いない。シューボックス型だけに、響きはウィーン・ムジークフェライン・ザールと似たところもあるのだろう。
(画像③)
さて、この夜の公演の「プラハ・ロイヤル・オーケストラ」の演奏は、十分に満足のいく演奏だった。ストリングスの音色、アンサンブルのレベルの高さは、チェコが弦の国といわれる所以だけある。コンサートミストレスが、メンバーをしっかりとまとめあげていたのも印象的だった。拍手が楽章毎に起こっていただけに、聴衆はやはり観光客がほとんどのようだが、これはご愛敬というところか(^^;
こんなに音響特性にすぐれたホールなのだが、ルドルフィヌムに比べるとスメタナ・ホールでのレコーディングは、圧倒的に少ないのが不思議。その理由の一つは、アルバムのリリース数はチェコ・フィルが一番多いため、必然的に彼らの本拠地であるルドルフィヌムが収録会場として選ばれるからだろう。チェコの自国レーベル「スプラフォン」のレコーディングもルドルフィヌムでのこちらが圧倒的に多い。帰国したらスメタナ・ホールでの収録されたアルバム探しも楽しみだ。