続いて、今度は国内バンドによる演奏を。現在、所有しているディスクには、「第1組曲」「第2組曲」両方が収録されているものはなく、いずれか片方ずつ収録されているアルバムを。いずれも2000年以降のレコーディングがほとんどで、吹奏楽の原点ともいえる曲として、近年、プロのバンドでも演奏される機会が増えているようだ。今回もレア盤として金管バンド版が登場。米国・英国・日本の計10枚のディスクを通じ、ホルストの名曲を改めて味わういい機会となった。(ジャケット画像:左上より時計回り)
○井田重芳指揮 なにわ《オーケストラル》ウィンズ(第1組曲のみ)
(2003年5月4日録音、ザ・シンフォニーホールにて収録、BRAIN MUSIC国内盤)
実に自然体な演奏。複数のオケ(主に関西エリア)のメンバーからなる特別編成のウィンド・オケという事もあり、オーケストラの作法を心得たハーモニクスな響きとなっている。テンポはややゆっくりめ。その響きは関西一の音響を誇るザ・シンフォニーホールの残響と相まって心地よい。マイク位置の問題だろうか、金管楽器がやや遠目に聴こえてしまうのがやや残念。なにわ《オーケストラル》ウィンズ代表の金井信之氏によるライナー・ノーツのコメントによれば、“オケメンバー”による“オケの響き”で、ホルストの名曲を再現したフェネル&クリーヴランド管盤の影響を大きく受けており、そこでの感動体験が、このウィンド・オケ活動の原点にもなっているようだ。
○佐渡 裕指揮 シエナ・ウィンド・オーケストラ(第1組曲のみ)
(2004年12月録音、りゅーとぴあコンサートホールにて収録、エイベックス国内盤)
もし自分が現役時代の高校生だったら、きっとお手本にしたであろう演奏。バースタインを師と仰ぐ佐渡氏だけに、爆演系の演奏をイメージしていたのだが、良い意味で裏切られた。ホルストへの敬意と共感に満ち溢れており、全体を通して丁寧でありながらも、熱きパッションを秘めた演奏となっている。セッション録音での収録だが、ライヴであれば、よりパッションに富んだ演奏になっていたに違いない。
ハイブリッドディスクの為、SACD層で聴いたが、幅広いダイナミックレンジでの高品位な録音に圧倒された。演奏も録音もハイレベルな一枚。レイニッシュ&ロイヤル・ノーザン・カレッジ盤同様、コリン・マシューズによる改訂版を使用。
○時任康文指揮 大江戸ウィンド・オーケストラ(第2組曲のみ)
(2000年9月22日録音、サントリー・ホールにてライヴ収録、IEJ国内盤)
「ジュビリー序曲」でもエントリーした大江戸ウィンド・オーケストラによる演奏。スタジオ・ミュージシャンやジャズ・プレーヤーが混在しているでしか、所々で、吹奏楽とは違う歌い回しなんじゃ?と思う時も…(^^; ともあれ、昔の懐かしさに浸りきって演奏していることが窺われ、自分達の原点はブラバンだったなあ・・・とノスタルジーを感じさせてくれる一枚。
○小澤俊朗指揮 東京ブリティッシュ・ブラス(第2組曲のみ)
(1991年録音、国内盤)
ロンドン・フィル盤のオケ版に続き、こちらは金管バンド版というレアな一枚。小澤俊朗&東京ブリティッシュ・ブラス盤は既にエントリーした「ジュビリー序曲」に収録されたアルバムの一曲。金管バンド版の編曲はS.ハーバートによるもの。オリジナルと調性も異なるが、金管楽器の特性が思う存分活かされており、違和感はまったくない。むしろ「ジュビリー序曲」と同様、金管バンド版が先に存在していたと思うほど。オケ版で聴いても、金管バンド版で聴いても曲の核心は変わらない曲というのは、原曲の素晴らしさの証でもある。やはりホルストはすごい人だ。