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この冬、ハリー・ポッターシリーズの全8作品を一気に観た。最初の3作はジョン・ウィリアムズ(b.1932)の作曲、後半は他の作曲家だが、ハリーポッターの顔ともいえる曲といえば、2001年公開の第1作から登場している「ヘドウィグのテーマ」だろう。
ヘドウィグとは主人公ハリー・ポッターの飼っているフクロウの名前。この楽曲ではチェレスタという楽器の活躍が魅力的。これまでチェレスタといえば、クラシックの世界ではチャイコフスキーの「くるみ割り人形」の中の「こんぺい糖の踊り」で使われるくらいの印象しかなかった。しかし、この曲の最初のワンフレーズ聴けば、誰もがハリー・ポッターのテーマと気付くくらい、映画音楽の世界でもこの楽器の存在感を一気に高めたジョン・ウィリアムズの功績は大きい。
先日1月26日にオンエアされた「題名のない音楽会」のジョン・ウィリアムズ特集でもこの「ヘドウィグのテーマ」が演奏されたが、視覚的にはまるでチェレスタ協奏曲?ともいうべき、難度の高いソリスティックな演奏だった。この曲の持つミステリアスでマジカルな雰囲気を演奏の中でいかに表現できるかがポイントといえるだろう。
折りしも2月8日はジョン・ウィリアムズの誕生日。御年87歳を迎えた巨匠のバースデー記念の意味合いも含め、こだクラで所有する4種類のオケ版(サントラ除く)をエントリーしたい。

■ギャビン・グリーナウェイ指揮 ロンドン交響楽団
(2017年録音、リンドハースト・スタジオにて収録、DECCA海外盤、ジャケット画像:左上)


以前エントリーしたアルバム「A LIFE IN MUSIC」に収録。チェレスタ&オケともにいずれも巧く、ジョン・ウィリアムズに縁の深い団体ならではの完成度の高さを感じさせる演奏。直近のレコーディングである点も含め、「ヘドウィグのテーマ」のベスト盤といえるだろう。

■ニック・イングマン指揮 ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団
 (2002年9月録音、エンジェルスタジオ、ロンドンにて収録、RPO海外盤、ジャケット画像:右上)


英国オケの演奏をもう一つ。こちらはアルバム「MOVIE LEGENDS THE MUSIC OF JOHN WILLIAMS」に収録。編集の影響だろうか、チェレスタの音がオケに比べ、ややデッドな音響で浮いた感じに聴こえてしまうのが残念。オケの演奏もやや推進力に欠けた印象を受けるが、ホルンセクションの豪快な鳴りっぷりは効果的に働いている。ちなみに指揮のニック・イングマン(b.1948)は過去、本ブログでも「ガンダム」のアルバムでエントリーしていた英国の著名な編曲家兼指揮者。

■エリック・カンゼル指揮 シンシナティ・ポップス・オーケストラ
(2002年10月録音、ミュージックホール、シンシナティにて収録、TELARC海外盤、ジャケット画像:右下)


アルバム「EPICS」に収録。いきのいいテンポ感、シーン毎の盛り上げ方、音楽性といった部分でエリック・カンゼルの手腕を感じさせる演奏。終結部は他の音源よりもワンフレーズ短く終わるが、これはコンサートでの演奏効果を意識した上でのカットなのかもしれない。コンサート映えする音源。
なお、You Tube上では世界の名奏者が集ったスーパーワールドオーケストラを日本のオーチャードホールで指揮している2004年頃の演奏動画が観られる(終結部の処理はやはり同じ)が、演奏が一層パワーアップしている。ホルンセクションには、現役時代のデイル・クレヴェンジャー(シカゴ交響楽団首席奏者)の姿もあって貴重だ。

https://www.youtube.com/watch?v=IQPXa9c3Vzs

■竹本泰蔵指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
 (2003年3月録音、東京芸術劇場にて収録、キングレコード国内盤、ジャケット画像:左下)


日本のオケもここで参戦。本ブログでも度々登場するアルバム「シンフォニック・スペクタキュラー」シリーズの第1作に収録。今回エントリーしたオケ及び先日の「題名のない音楽会」で聴いた東京フィルに比べると、演奏レベルはスタンダードで、シンフォニック的な迫力は今一つかもしれない。しかしながら本シリーズでほぼ全てオリジナルスコアを使用して映画音楽の魅力を伝えてきた日本国内のパイオニアとしての日本フィルの功績は大きい。


【こだクラ過去ブログ/ハリー・ポッター関連】
ハリー・ポッターシリーズの隠れた名曲~パトリック・ドイルによる「ホグワーズ賛歌」(アルバム2種)