ついにiPod通勤での騒音対策&解像度問題に終止符を打つ時がきた。SONYが今秋発売した「NUDEプロフェッショナルグレード“EX”モニター」の最上級モデル、密閉型インナーイヤーレシーバー「MDR-EX700SL」。まさにキャッチコピーにある“SONYの技術力の粋を結集し”、“原音に忠実なピュアサウンド”を実現してくれるモデル。希望小売価格は36,750円。これを高いか、妥当かと思うかは店頭での比較試聴で納得ができた。SHUREやUltimate Earsの海外のハイグレードモデルも試聴してみたが、SONYの抜きん出た性能に“一聴瞭然”、購入を決意してしまった(^^;
結局、SONYのノイズキャンセリングイヤホンでの解像度の問題は試行錯誤の末、同じSONYの最上級モデルが解消してくれた。
音に生命力がある。音圧が上がり、臨場感がぐぐっと増した。課題だったストリングスの低域もはっきりと聴き取れる。例えるなら耳に高級アンプを積んでいる感覚、といってもいいかもしれない。
今まではクラシックは音圧が低く、ついついボリュームを上げざるを得なかったが、この「MDR-EX700SL」に替えてから逆(ボリュームを下げる)の現象が起こるまでになった。
その秘密はドライバーユニットのサイズにあった。一般的な密閉型インナーユニットのサイズは9ミリ程度。ところが、この、「MDR-EX700SL」は何と16ミリ!それは外観の形状からも明らかだ。このサイズは'07年9月時点で密閉型インナーイヤーレシーバーとしては世界初だという。
また、騒音対策で威力を発揮したのが、SONYが新開発した装着スタイル。これまでドライバーユニットは外耳道に対して平行に配置されるのが通常だったが、この「MDR-EX700SL」は垂直に配置し、優れた装着性を実現している。SONYはこれを「密閉型バーティカル・イン・ザ・イヤー方式」と呼んでいる。機能の詳細はSONYのページに譲りたい。また、設計開発者のページがあるのも大変興味深い。
iPodに入れたマリナー&アカデミー室内管弦楽団のヘンデル「メサイア」~「For unto us a Child is born」を店頭で試聴した時、QUAD購入時の感動が蘇ってきた。バッハの「無伴奏ヴァイオリンの為のソナタとパルティータ」でのイツァーク・パールマンのソロの音抜けの良さにもびっくり。通勤中に無伴奏ヴァイオリンが楽しめるとは…。その他、和泉宏隆氏やクリスチャン・ジェイコブのピアノではペダル音までもがくっきりと聴き取れる。密閉ダイナミック型のモニターイヤホンならまだしも、インナーイヤーでこれだけの再生ができるとは信じられない位だ。
もちろん、これだけの再生音を引き出せるのは非圧縮モードの「WAV」を選択しているからこそだともいえる。通常の圧縮モードで取り込んでいては理想的なリスニング環境は実現できない。
自分の様なクラシック中心のリスナーもこれでようやく安心して聴ける環境になった。今では通勤時間が楽しいと思える程だ。もちろん、部屋でじっくりと耳を傾けて聴くルーム・オーディオとの使い分けがあるからこそ、モバイル・オーディオの楽しみも生まれるといってよいだろう。
iPod本体の価格をイヤホンが上回るという、何とも不思議な(?)買い物になってしまったが、往復2時間という通勤時間を考えたら今回の投資は決して無駄ではなかったと自分を言い聞かせている(^^)先日購入したばかりだったノイズキャンセリングイヤホンには申し訳ないが、これらの機能に頼るのは飛行機等の一時的な特殊環境に限った方がいいだろうと今は思い直している。
アップル社のユーザー本位なiPodの機能と、ソニーが長年培ってきた匠の技が融合したモバイルオーディオ。日米間の技術結晶の恩恵に授かったリスナーになってしまった(^^)