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週明けからプロコフィエフの交響曲第1番を楽しんでいる。通称「古典交響曲」といわれるこの作品は、「もしもハイドンが現代に生きていたら書いたであろう作品」というコンセプトで、26歳(1917年)の時に作曲されたプロコフィエフの代表作の一つ。まさしく古典回帰な曲で、チャイコフスキーやショスタコーヴィッチといったロシアの作曲家の劇的な作風とは対照的だ。演奏側も交響曲の形式を取りながら、二管編成と大編成を要さないので、室内オケの重要なレパートリーの一つにもなっているようだ。
聴き手側としては、オケのアンサンブル精度や柔軟性を試す要素がこの曲にはあるため、オケの個性(カラー)を知る上での、よいテストピースにもなる。実際、今回取り上げたディスクにもあるように、デビュー盤や、交響曲全集第一作目として録音するケースもあり、レコーディングのとっかかりとしても良いようだ。取り上げた5つのディスクの内、4つが米国のオケとなったが、米国オケは意外とこの曲が好きなのかも?(^^)プロコフィエフ自身、米国に渡った経験もあり、その辺りとの関連性も気になる所だ。
指揮者の個性と共に、オケの個性(カラー)も垣間見るいい機会となった(^^)
(ジャケット画像:左上より時計回り)

○ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
  ('60年代?SONY輸入盤)


現状でのマイベスト盤。一聴して、プロコフィエフの古典交響曲ってこんなに楽しい曲なのか、と思える演奏。この曲が持つ軽妙、ユーモラスな一面が見事に表現されている。
1楽章から実に勢いがあるテンポ。今回取り上げたディスクの中では最も快速な楽章となっている。指揮者とオケとの呼吸がぴったりで、改めてオーマンディとフィラデルフィア管の黄金期を窺わせる。プロコフィエフ作品とのサウンド的な相性も実にいいようだ。
録音は'60年代だけにさすがに色あせているのが残念だが、演奏は今聴いても鮮度抜群。聴いていて、とにかく楽しくなってくる。

○ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団
 ('72年録音、セント・ジョンズ・スミス・スクエアにて収録、DECCA輸入盤)


室内オケとしての理想的な演奏。ストリングスの扱い方の巧さは、さすがヴァイオリン出身のマリナーならでは。1楽章のトランペットのアクセントもしっかりと効かせており、メンバーの自発性をうまく引き出している。
このような二管編成の曲は、アカデミー室内管のようなオケには、うってつけな作品と思う。'70年代初期であるが、臨場感に溢れ、鮮度が高い録音。セント・ジョンズ・スミス・スクエアの残響成分が豊富な会場効果でもあるのだろう。この会場では、'76年にヘンデルのメサイアの名盤も生まれており、DECCA録音との相性の良さを窺わせる(^^)

○ゲオルグ・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団
 ('82年5月録音、オーケストラ・ホール、シカゴにて収録、DECCA輸入盤)


以前、のだめ使用曲でエントリーした「ロメオとジュリエット」のアルバムに収録されていたカップリング曲。
オーマンディ盤の軽妙ぶりとは対照的な、オケのヴィルトゥオーゾぶりが発揮されたショルティ&シカゴ響らしい演奏。1楽章から実にパワフルで、エッジが効いている。プロコフィエフよりも、むしろショスタコーヴィッチ版、古典交響曲という感じ。巧すぎ、且つマッチョすぎ、な所がたまに傷か(^^) オーマンディ盤か、ショルティ盤のどちらが好きか、と問われれば、個人的にはオーマンディ盤の志向が好きだ。

○ヨエル・レヴィ指揮 アトランタ交響楽団
 ('91年3月2日録音、ウッドラフ・メモリアル・アーツ・センターにて収録、TELARC輸入盤)


巨匠、ロバート・ショウ(1916-1999)の後を継ぎ、'88年にアトランタ響の音楽監督に就任したヨエル・レヴィ(b.1950)の初デビュー盤。二人ともクリーヴランド管弦楽団と共通点(ショウ:ジョージ・セル時代の副指揮者、レヴィ:'80~'84年までアソシエート・コンダクター)がある経歴という縁もあったのかもしれない。
1楽章から程よいテンポ感が心地よい。4楽章は今回取り上げたディスクの中で最も快速なテンポ。途中、通常のテンポでもそれなりのテクニックを要するフルート・パートのフレーズがあるが、余りにも快速なテンポに、奏者の必死な様子が伝わってくる。まるでフルート協奏曲のようだ(^^)録音の良さもTELARCならではで、隠れた名盤といえるだろう。

○アンドレ・プレヴィン指揮 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
 ('86年5月録音、U.C.L.Aロイスホールにて収録、PHILIPS輸入盤)


プレヴィン&ロス・フィルのプロコフィエフ交響曲全集の第一作目となったアルバムで、以前エントリーしたロシア管弦楽名曲集と共に、PHILIPSへのデビューアルバムとなるもの。しかしながらプレヴィンの辞任により、全集の完成には至らなかったようだ。2枚とも、ロシア物だけに、'85年の就任以降、前任のカルロ・マリア・ジュリーニが得意としていたドイツ物とはまたカラーを変えたいというプレヴィンの意向もあったのだろう。
ロシア管弦楽名曲集が、どちらかというと外向的でヴィルトゥオーゾなサウンドなのに対し、このプロコフィエフではストリングスを中心とした内向的且つ緻密なサウンドを展開。1楽章、ややまったりとした感じでスタートするが、後半楽章から勢いにのり、4楽章ではロス・フィルらしい、スマートなアンサンブルを聴かせてくれる。2枚とも、同時期の録音だけに、聴き比べをするのも面白い。録音がややデッド気味なのが惜しい。