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4月のサントリー・ホールでの公演以来となるNHK交響楽団の公演「N響 夏2009」を聴く。チェコ・オーストリア・ドイツという中欧の3ヶ国の代表的な名曲が楽しめるプログラミングがまず嬉しい。また、個人的には英国を代表する指揮者の一人であるジェームズ・ジャッドの姿を見られるのも嬉しかった。ジャッドといえば、既に、ワーグナーの「ジークフリート牧歌」で、ヨーロッパ室内管と共演した名盤を過去エントリーしている。N響とは1996年以来、何度も客演しており、相互の親密ぶりを窺わせる。シルバーの長髪のジャッドの容姿は、どこかポール・マッカートニーと似てなくもない(?)

当夜のプログラムは以下の通り。

ドボルザーク:序曲「謝肉祭」作品92
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98


座席は2階の中央に程近いS席だった事もあり、全体のサウンドが捉えられる好位置。ただ、NHKホールだけに、サントリー・ホールの時のような、シュワっとはじけるホール・プレゼンスを体感できないのが惜しい。
ジャッドは終始、指揮棒を持たないままでの指揮。手振りだけに、動きに無駄がなく、分かりやすい指揮ぶりだったように思う。要所要所でのツボを押さえながら、手堅くまとめる職人系の印象を持った。

1曲目のドボルザークの「謝肉祭」は、以前も本ブログにエントリーしたお気に入り曲。楽員のテンションを高める意味でもぴったり(!)で、オープニングにふさわしい選曲だ。コーダ部分で一気に盛り上がるパーカッションが華々しかった。

2曲目のモーツァルトの「ピアノ協奏曲第21番」では、29歳のアメリカ人、ジョナサン・ビスによるピアノで聴く。音楽一家の家庭に育ち、既に米国をはじめヨーロッパの主要オーケストラとの共演歴もある華麗な経歴の持ち主。全体的には秀才型のピアニストという印象。しなやかなタッチで、パフォーマンスぶりも十分だが、1、3楽章のアレグロではオケよりも若干テンポが前のめりになってしまう面も感じられた。反面、有名な2楽章はやはり何度聴いてもうっとりさせられる。N響との初めての共演に、大きな拍手を浴びていた。

休憩を挟んだ本日のメイン・ディッシュは、N響お得意のドイツ物。ブラームスの交響曲第4番といえば、4月に聴いたファビオ・ルイージ&シュターツカペレ・ドレスデン・の来日公演の記憶がまだ新しい。
ジャッド自身、ロイヤル・フィルとレコーディングした交響曲全集があるだけに、ブラームスはお得意のレパートリーだったに違いない。
1楽章冒頭のテーマは、さすがに、シュターツカペレ・ドレスデンの時に聴いた“すすり泣くような”ような響きでは味わえなかったが、最終楽章まで手堅く聴かせてくれた。ブラームスの交響曲には、彼自身が築き上げた独特の構築美があるだけに、指揮者ならではの“遊び”が入り込む余地がない。逆に、いかに作品そのものと向き合い、情熱を込められるかが、ブラームスの演奏に求められる資質でもあるのだろう。

盛大な拍手に応え、演奏されたアンコールは、「ハンガリー舞曲」の第4番。交響曲とは違う華やかな舞曲だけに、大いに盛り上がった。この日、トランペット首席を務めた関山氏のトランペットが朗々と鳴っていたのが印象的だった。