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前回エントリーしたフィリップ・スパーク&東京吹奏楽団によるアルバム「リフレクション」に収録されていた「ジュビリー序曲」を機に、この曲について改めて取り上げたい。ジュビリー序曲の原点はやはりオリジナルである英国式金管バンド版。以前、日本の金管バンド(小沢俊朗指揮 東京ブリリアントブラス)によるジュビリー序曲をエントリーしたが、その後、英国金管バンドによる2種類のアルバムに出会うことができた。やはり以前エントリーしたなにわ《オーケストラル》ウィンズ盤を含めて、こだクラ所蔵のジュビリー序曲はこれで計8ディスク(英国式金管バンド版×3枚、吹奏楽版×4枚、ブラスアンサンブル版×1枚)。こだわりは尽きない…。

【英国金管バンド盤:その①】
エイドリアン・リーパー指揮 ブリッグハウス&ラストリック・バンド
(1987年12月録音、ハダースフィールド・タウン・ホールにて収録、polyphonic海外盤)


アルバム「オン・ザ・バンドスタンド」に収録。現時点でのマイベスト盤。冒頭のファンファーレはゆったりとしたテンポで、ブリリアント且つ壮大なスケールに奏でられる。当然のことながら金管奏者の数は吹奏楽盤よりも多いだけに、ブラスの迫力は満点。コルネットがこんなに勇壮に鳴るなんて!力強さだけではない。歌うところは歌い、鳴らすところは鳴らす、これぞ金管バンドの醍醐味。ファンファーレに呼応する中低音ブラスの響きは、アルプスの山々に響くアルペンホルンのようにも聴こえる。
後半のカンタービレはタンバリンのリズムが歯切れよく刻まれ、メリハリが効いている。全体としてパワーみなぎるジュビリー序曲だ。
ブリッグハウス&ラスティック・バンドは英国北部のヨークシャーで1881年に創立された名門バンドで、かつて、ロンドン交響楽団の名トランペット奏者、ロッド・フランクス(1956‐2014)も所属していた。後で知ったのだが、本アルバムにはロジャー・ウェブスターの名前のクレジットが・・・。ロジャー・ウェブスター(b.1960)といえば、1988年よりブラック・ダイク・バンドの首席コルネット奏者も務めた伝説のコルネット奏者だが、当時はこのブリッグハウス&ラストリック・バンドの首席コルネット奏者を務めており、移籍前の貴重なレコーディングでもある。コルネットセクションの巧みさもこれで納得。また、指揮者のエイドリアン・リーパー(b.1953)はフィルハーモニア管弦楽団のホルン奏者で、その後指揮者に転向、1986年にはハレ管弦楽団の副指揮者に就任しているだけに、ブラスバンドのコントロールも熟知していたに違いない。

【英国金管バンド盤:その②】
リチャード・エヴァンス指揮 BNFLバンド
(1996年5月録音、ジオン・アーツ・センターにて収録、polyphonic海外盤)


アルバム「ケンブリッジ・ヴァリエーション」に収録。フィリップ・スパーク自身によるプロデュース。ブリッグハウス盤に出会った後に聴くと、テンポ運びが今ひとつで、ややどん詰まりな感が否めない。音響空間もややデッドな印象。BNFLバンドも英国北部のランカシャーの名門バンドだけに、演奏自体は申し分ないが、こだクラではブリッグハウス盤に軍配を上げたい。