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本格的に迎える春を前に、ここ数日春雨が続く。すっかり桜も満開模様。もう散る桜も出てきた。今日はベートーヴェンのピアノ協奏曲の中でも好きな第4番をピアノ:ジョン・リル、サー・アレキサンダー・ギブソン指揮のスコティッシュ・ナショナル管弦楽団の演奏で(録音:75年12月、EMI)。

現在のベートーベンの4番のコンチェルトの中でのマイベスト盤。自分にとってのベストかどうかは、一楽章冒頭の5小節のピアノソロが基準になっている。ここはピアニストの主張を出しすぎず、自然な呼吸とテンポでその後のオケパートに違和感なくつないでいけるかがポイントだ。

ジョン・リルの演奏はそのポイントを満たしてくれた。彼の演奏にはベートーベンに特有の、ゴツゴツ感がない。ピアノとオケがお互い主張しすぎず、バランス良く調和する。ピアノという楽器を綺麗に共鳴させているともいえる。それと、ギブソンも好サポート。この演奏を聴いてベートーベンの4番のコンチェルトがこんなにも美しいんだと改めて再発見することができた。

リルの演奏に注目するようになったのはチャイコフスキーのピアノ協奏曲のアルバムを聴いたのがきっかけ(共演:ジェイムズ・ジャッド指揮ロンドン交響楽団、87年 カールトン)。ピアノが瑞々しく鳴り渡り、洗練された演奏。終楽章もピアノだけが一方的に熱くなったり走ったりするのではなく、オケと共に一体となった名演奏を繰り広げている。こちらも間違いなくチャイコンのベスト盤の一つに入る。

それもそのはず、リルは70年のチャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で第一位を受賞。44年ロンドン生まれのイギリスを代表するピアニストだ。英国王立音楽院時に若干18歳で難曲ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番をサー・エイドリアン・ボールトの指揮で演奏したというから相当な実力派だ。イギリス人でピアノ部門優勝したピアニストはリル意外に誰かいるのだろうか?90年に来日した事もあるそうだが今後も来日の機会があれば是非聴いてみたいピアニストだ。

残念なのは録音状態があまり良くない事。70年代はアナログ録音の全盛期なのだが、音のフォーカスが定まっておらず、やや曇った印象を受ける。EMIの廉価盤シリーズだから・・・という事ではないはずで、ここはEMIの録音は自分にとってあまり好きではない理由となっている。

この冒頭5小節のソロだけを弾きたいが故に(というよりここしか弾けないが…)書店でスコアを購入して一時期練習していたものだ。コンチェルトを弾くピアニストの気分に一瞬だけ浸れる?にもぴったりな曲かも・・・。また練習しなきゃ(^^;
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