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震災以降、復興祈願を象徴するCMの一つに、サントリーのCMがあった。商品PRはなく、坂本九(1941-1985)の名曲「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」を、歌手やタレントが入れ替わりでワンフレーズずつ歌うという内容で、“がんばろう!日本”を見事に体現していたのが印象的だった。現在でも色々な形でアレンジされているこの名曲を、吹奏楽版、オケ版、合唱版の手持ち音源で味わってみたい。(ジャケット画像:左上より右回り)

【上を向いて歩こう】
■吹奏楽版
高木義勝指揮 航空自衛隊航空中央音楽隊
(2000年4月録音、航空自衛隊航空中央音楽隊 第一ホールにて収録、キングレコード国内盤)


陸海空を代表するの中央音楽隊の一つ、航空自衛隊の航空中央音楽隊によるもの。アルバムのタイトルが「ワールド・ポップ・イン・ブラス」となっている通り、世界のポップナンバーが収録されているが、日本を代表するポップナンバーとしてこの「上を向いて歩こう」が収められている。「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」調の派手さはなく、ここでは木管楽器を中心に、しっとりと歌われた「上を向いて歩こう」に仕上がっている。個人的にはもう少し、アレンジにノリが欲しかった。

浅田 享指揮 浜松交響吹奏楽団
(2005年12月録音、アクトシティ浜松にて収録、CAFUA国内盤)


アルバム「ジョイフル・コンサート」に収録。「坂本九スタンダードメドレー」と題されたメドレーの一曲目。2名のクラリネット奏者のソロの掛け合いによって奏でられるのがユニークだ。航空自衛隊中央自衛隊と同じ、木管楽器が主役ながら、こちらはどこかにカラッとした明るさのある「上を向いて歩こう」。楽団オリジナルのアレンジが今風で光っている。

■合唱版
慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
(1981年10月録音、東芝EMI第一スタジオにて収録、TOSHIBA EMI国内盤)


アカペラブームの先鞭役ともいえる、男声合唱による演奏。アルバム「グリークラブ アルバム第2集」に収録。ゴスペラーズや、TAKE6等、現在の少人数での人気アカペラグループと比較すると、そのスタイルや歌い方にはやや古めかしさ(もはや古典的?)を感じてしまうのは否めないが、男声ならではのノリの良さ、力強さに元気づけられる。

【見上げてごらん夜の星を】
■オケ版
宮川彬良指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団
(1998年1月録音、ザ・シンフォニーホールにて収録、DENON国内盤)


以前、エントリーした「マイ・フェイバリット・シングス」の名アレンジや、「マツケンサンバ」でお馴染みの、指揮者・作曲家の宮川彬良氏が、関西の雄、大阪フィルと共演した音源。アルバム「宮川彬良&大阪フィル・ポップス・コンサート」に収録。「夜空」という共通点で、「見上げてごらん夜の星を」と「ETのテーマ」の旋律を一曲の中に共存させた、これぞ宮川マジック!といえる名アレンジで、シンフォニック且つゴージャスに聴ける。途中で「星に願いを」をこっそりスパイスとして効かせているのもまたオツだ。ザ・シンフォニーホールの残響もうまく取り込んだ優秀録音。

■吹奏楽版
浅田 享指揮 浜松交響吹奏楽団
(2005年12月録音、アクトシティ浜松にて収録、CAFUA国内盤)


上述の「坂本九スタンダードメドレー」の第2曲目。ここではトランペットが、長いソロ(スタンドプレイだろうか?)をしみじみと感動的に歌い上げる。ポピュラーステージのライヴで、こんな風に吹けたらかっこいいだろうなあと思わせる。ちなみに、この後、「明日があるさ」が続き、ノリノリで終わるというメドレー構成になっている。

■合唱版
斉田好男指揮
関西学院グリークラブ
立命館大学メンネルコール
同志社グリークラブ
大阪大学男声合唱団
甲南大学グリークラブ
関西大学グリークラブ
(1994年11月3日録音、フェスティバルホールにて収録、非売品)


締めくくりとして、自分自身、学生時代に6大学の演奏会(第21回関西六大学合唱演奏会)の合同ステージのアンコールで歌った懐かしのライヴ音源を。以前エントリーしたミサ以上の、男声約450名という大所帯(ジャケット画像に人文字が入っているのは関西六大学の「六」の字!)だが、見事なアカペラハーモニーを聴かせており、純粋で美しい歌声が、会場のフェスティバルホールに響き渡る。まさしく夜空に向かって歌い上げるかような有志達の青春の姿に、思わず“乾杯!”と言いたくなる。