「英国・米国オケ編」「欧州オケ他編」でエントリーした各地のオケによるローエングリン。今回の「ブラス編」で一区切りとし、吹奏楽版、ブラス・アンサンブル版、金管バンド版の計3つの編曲版を締めくくりにエントリーしたい。金管奏者の手腕が印象を左右する事もあるワーグナー作品にとって、ブラスの世界でもワーグナーは重要なレパートリーの一つになっているようだ。各名門団体による演奏はいかに?(ジャケット画像:左上より時計回り)
【吹奏楽版】
■エルガー・ハワース指揮 フィリップ・ジョーンズ・アンサンブル
(1984年3月録音、ウォルサムストウ・アッセンブリー・ホール、ロンドンにて収録、DECCA海外盤)
アルバム「BRASS AT WALHALLA」に収録。通常はブラス・アンサンブルとして活躍する彼らが吹奏楽編成でワーグナーに挑んだ意欲作。編曲は英国の軍楽隊の楽長でもあったフランク・ウィンターボトム。本来、弦楽器が受け持つべき伴奏の刻みはここではクラリネットが中心になっている分、ブレスも含め、タンギングに四苦八苦している様子が窺える。しかしながら、通常のウィンド・オーケストラと異なり、ブラスは名門オケ出身のプレーヤー揃いだけに、実に推進力に富んでおり、密度の濃いサウンドを展開。曲は前奏曲から巡礼の合唱へと続く。
【英国式金管バンド版】
■ニコラス・チャイルズ指揮 ブラック・ダイク・バンド
(2005年7月録音、Morley Towns Hallにて収録、OBRASSO海外盤)
アルバム「SPECTACULAR CLASSICS」に収録。主旋となるホルンパートは、ブラスバンドではテナーホルンが担当。伴奏の刻みはコルネットパートだが、早いパッセージもお手のものといった感じはさすがブラック・ダイク・バンド。この第3幕への前奏曲の他に、「エルザの大聖堂への行列」も吹奏楽版・ブラスバンド版共に愛奏されている。本編曲は禁問の動機で終結する。
【ブラス・アンサンブル版】
■エド・デ・ワールト指揮 カナディアン・ブラス他
(1991年10月録音、イエス・キリスト教会、ベルリンにて収録、PHILIPS国内盤)
アルバム「WAGNER FOR BRASS」に収録。指揮者がワーグナーを得意とするエド・デ・ワールトである事に加え、演奏メンバーが、カナディアン・ブラスの5名を核に、コンラディン・グロートやゲルト・ザイフェルトといったベルリン・フィル首席のメンバーに加え、ワーグナーの本場バイロイト祝祭管のメンバーとの共演という豪華キャストだけに、リリース当時は話題に上ったに違いない。
編曲は、以前、カナディアン・ブラスによるバッハの「ゴールドベルク変奏曲」でもエントリーしたアーサー・フラッケンポール。このローエングリンでは、伴奏系はカナディアン・ブラスが担当しているのだろうか、細やかな動きには強みを発揮していたものの、ベルリン・フィルやバイロイト祝祭管のメンバーとの共演で期待したかった重厚なサウンドはあまり感じられず、意外にあっさりとした印象。調性は上記2つの演奏と異なり、原曲と同じとなっている。曲は前奏曲から巡礼の合唱へと続く。