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何かがきっかけで、普段聴き慣れている音楽とは異なるジャンルに出会い、新しい楽しみ方を見つけることがある。自分の場合、それにあたるのがブラジル音楽。きっかけは、鎌倉の人気カフェ店「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」で購入した、「鎌倉のカフェから」というブラジル音楽のコンピレーションアルバムだった。マスターの堀内隆志氏が自ら選曲したアルバムで、店内のBGMとしてもイメージされていたので、うちカフェにもぴったり、と数年前に初めてアルバム(第1作:画像下)を購入。今年に入り、新たにアルバム(第4作:画像上)を購入した。
従来はバッハなどバロック作品を中心に主にクラシックやジャズをBGMとして聴くことの多かったカフェタイムだったが、夏に向かう季節の移り変わりもあってか、最近はブラジル音楽がヘビーローテーションになっている。

最大の魅力は、アルバムのプレイボタンを押すやいなや、澄み切った青空と、さんさんと輝く太陽の情景が眼前に広がること。ブラジルに行ったことはないが、ブルースカイともいうべき光景が音楽から直に伝わってくる。特に晴天の日のカフェタイムには絶好のBGMで、自然と気分が高まってくるのを感じる。ここ数日は快晴ながら蒸し熱い日が多かったが、朝の通勤時にテンションを上げるのにもぴったりだった。

もう一つの魅力は、ブラジル音楽を奏でる数多くのアーティストによる作品がバランスよく配列されていること。そこにはコンピレーションアルバムならではの良さが活きている。まずは作品やアーティストに関する音楽的な知識や先入観なしでBGMとして聴いてみることをお勧めしたい。今回は2017年にリリースされた第4作目となるアルバム「鎌倉のカフェから~While roasting coffee beans~」(Rambling国内盤)の感想を主に綴っておきたい。

(以下、曲名:アーティスト)
① Desafio: To Brandileone
② Outras Aguas (feat. Giana Viscardi): Daniel Oliva
③ Vida Solta: Filo Machado:
④ Diga Voce: Dani Gurgel
⑤ Sabe La (feat. Vanessa Moreno): Zeli Silva
⑥ Volta Bem (feat. Bruno Migotto, Daniel de Paula,
    Joao Paulo Barbosa, Julia Woolley & Paulo Malheiros): Louise Woolley
⑦ Dois: Gustavo Spinola
⑧ So Sorriso: Dani Black
⑨ Sou Louco Por Ela: Alexandre Grooves
⑩ Deixa Acontecer: Lili Araujo
⑪ Farofa: Mani Padme Trio
⑫ Vento Que Embala Bananeira: Karine Aguiar
⑬ No Tambor De Crioula: Adriana Cavalcanti
⑭ Donde Estabas Tu: Yaniel Matos
⑮ Odoya:Beth Amin

本アルバムには男性、女性アーティストそれぞれのボーカル曲がバランスよく収められている。ポルトガル語の意味や歌詞などは分からなくてもよい。聴い入っているうちに、歌声もスキャットもボーカルそのもののがまさに楽器であり、言語を超えた音楽の心地よさがあることに気付かされる。ポルトガル語といえば日本語になっている「カステラ」や「パン」も元はポルトガル語に由来していたこともあり、意味は分からずとも、音として聴ける親近感がある。

1曲目の「Desafio(デザフィーオ)」のピアノとパーカッションのイントロから、既に南国の青空に誘われてしまう。そこにTo Brandileone(ト・ブランジリオーニ)のボーカルが加わると、海から心地良い潮風が吹いてくるような感覚に。店が所在する鎌倉を含む海の近い湘南エリアのロケーションともぴったり合う。
2曲目の「Outras Aguas (オウトラス・アグアス)」や3曲目の「Vida Solta(ヴィダ・ソルタ)」は、ジャズギターやアコースティックギターの卓越したテクニックの素晴らしさもさることながら、Giana Viscardi(ジアナ・ヴィスカルヂ)の女声ボーカル、Filo Machado(フィロー・マシャード)の男声ボーカルには、歌声の温かみと共にまったりとした味わいがある。カフェタイムのくつろぎのひと時をそっと包み込んでくれる、そんな心地良さがこのアルバムにはある。
実際、マスターの堀内隆志氏自身、本アルバムのサブタイトルにも表れているように、コーヒー前の焙煎の合間の休憩時間にこれらの楽曲を聴いてきたという。選曲された楽曲は実際に「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」でライヴを行ったアーティストも含まれた、堀内氏一押しの面々。ブラジル音楽の新しい潮流、「ノヴォス・コンポジトーレス」(新しい作曲家たち)と呼ばれるサンパウロ発の音源によるものだという。例えば9曲目の「Sou Louco Por Ela(ソウ・ロウコ・ポル・エラ)」の Alexandre Grooves(アレシャンドリ・グルーヴィス)などはそんな都会的な新鮮さを感じる。
アルバムと共に購入したマスターの著書「コーヒーを楽しむ。」(主婦と生活社、画像下)を読むと、ブラジル音楽に出会った経緯も書かれており実に興味深い。

これらの音楽に心地よく浸れるのはマスターのブラジル音楽への造詣と選曲センスがあってからこそ。カフェがきっかけとなり、新たな音楽と出会う楽しみがまた一つ増えた。そういえば、2013年に訪れた、北海道・美瑛でのカフェでもそのような出会いがあったことを思い出した。夏の季節がまもなく到来するこれからの時期、ますます出番が増えそうだ。


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