画像

フリードリヒ・グルダチック・コリアつながりで小曽根 真へ。まるで‘笑っていいとも’のテレフォンショッキングみたいになってしまった・・・(^^; 6年程前、小曽根 真の実演に初めて接する機会があった。九州転勤時代、九州交響楽団の定演に彼がガーシュインの「ピアノ協奏曲へ調」で登場した時だった。プログラム前半だったにも関わらず、聴衆の熱い拍手に応え、アンコールに彼のオリジナル曲、「Terra de Amor」を披露。今度はソロで、しかも足でリズムを取りながら弾く姿に、彼のジャズへの情熱がほとばしる。九州随一の音響を誇る天神の福岡シンフォニーホールを、ジャズの熱い空間で満たした感動が忘れられない。

感動は、その3年後、横浜でのライブ(関内ホール)へ。今度はクラシックでのゲスト演奏ではなく、正真正銘のジャズ・マンとしてもの一面を聴きたくて聴きに行った小曽根の敬愛するヴィブラフォン奏者、ゲイリー・バートンとの友情公演。ヴィブラフォンって鉄琴だっけ?位の知識しかなかったそれまでのイメージが、一夜にして一変する事になる。

バートンとの出会いは、小曽根が'80年にボストンのバークリー音楽院に入学、その後'83年にゲイリー・バートン・グループに加入して以来、20年以上に渡るつきあいだという。当時22歳の小曽根にとって、18歳年上のバートンはまさにジャズの師匠(現在までに5回のグラミー賞を受賞)であり、人生の先輩だった事だろう。

彼が生み出した片手に2本、両手に計4本持つマレット奏法は、まさしくピアノの鍵盤上を駆け回る両手と同じ。いや、両手以上に繊細なニュアンスを表現していたかもしれない。それはまさに超絶技巧というものを超えたパフォーマンスだった。小曽根のピアノはバートンのヴィブラフォンと絶妙に絡み合う。バートンとのコラボレーションは小曽根なくしてありえないと思えるライブだった。曲目もバラエティにとんでおり、オリジナルからクラシックのアレンジまで多彩な作品を披露してくれた。

今宵はそんな彼等の熱い演奏を想起させてくれる一枚。「VIRTUOSI」(ヴァーチュオーシ)と題されたアルバム('01年8・10月録音、マサチューセッツにて収録、コンコード・レコード国内盤)にはお馴染みのクラシックの名曲が収められている。
ラヴェルの「クープランの墓」ではオーボエの主旋律をビブラフォンで奏で、その後インプロヴィゼーションを展開。一方、これって原曲がクラシック?と聴き間違う程のジャズとの相性がいいのはスカルラッティ。ガーシュインの「ピアノ協奏曲ヘ調」では、原曲をジャズ・デュオに発展させた見事なアレンジとなっており、自国作曲家への敬愛が感じられる。

実はこのCD、終演後のサイン会の時に購入した中の一枚。ファンとの会話を気軽に楽しみながらサインに応じる二人の姿が印象的だった。自分の順番が回ってきた際、思い切って九州交響楽団との共演の話を切り出してみた。すると小曽根さんは(もちろんその後転勤になった事情は知るわけもないが)「九州まで聴きにきてくれたんだ!ありがとう」と嬉しそうな表情を見せてくれた。

小曽根さんの魅力はジャズという枠だけに収まろうとしない、飽くなきチャレンジ精神だと思う。最近はクラシックもより積極的のようで、つい先日の‘熱狂の日’でも「ラプソディ・イン・ブルー」で出演したことが記憶に新しい。

ジャズは一度実演に接すると病みつきになるものがある。それは演奏パフォーマンスやパッションというものが、耳だけでなく、目を通じても伝わってくるからだと思う。少なくともバートン&小曽根の演奏からは伝わってきた。

日本が生んだ偉大なジャズ・ピアニスト、“オゾネ”の活躍を今後も見守っていきたい。


《参照マイブログ》
モーション・ブルー・ヨコハマでの日野皓正ライブ
横浜の熱い夜~日野皓正クインテットを聴いて~


画像