画像

どことなく郷愁を感じる寂しげなメロディ。
千秋が師と仰ぐヴィエラ先生に思いをはせるシーンで度々流れる曲はドボルザーク作曲の「チェコ組曲」。第1話から、クラシック通にもあまり知られていない曲が登場した。まるでヴィエラ先生のために作られたオリジナル曲のように鳴り響く。このドラマのサウンドコーディネーターはまさしく選曲の達人だと思う。
そういえばこの曲、キリル・コンドラシンの「新世界」のディスクのカップリングに入ってたなあ、と早速CD棚をこそこそ・・・。あった、あった!「チェコ組曲」ならぬ「ヴィエラ先生のテーマ」(^^)
の収録ディスク。演奏はアンタル・ドラティ指揮 デトロイト交響楽団('80年6月収録、ユナイデット・アーティスツ・オーディトリウムにて収録、デッカ輸入盤)で。

全5曲から成るこの曲は、有名な「スラヴ舞曲第一集」(1878年作)の翌年に作曲されており、「スラヴ舞曲」の陰に隠れた名曲。ドラマでは第2曲の「ポルカ」と第5曲の「フリアント」が使用されている。

まだドボルザークがアメリカ滞在の前の作品ではあるが、「家路」として知られる「新世界」の2楽章以外にもこんな郷愁漂う雰囲気の曲があったなんて・・・。

ドラティ&デトロイト響による第2曲「ポルカ」の演奏は、テレビ版に比べるとやや早めのテンポで展開。さらっとした仕上がりとなっているが、2拍子の早い本来のポルカのリズムに忠実で、オケが柔軟性あるサウンドで応えている。第5曲「フリアント」は「スラヴ舞曲」同様、激しいリズムながらも「ポルカ」同じく、どことなく郷愁あるメロディーが聴くものの心を揺さぶる。

デトロイト響とはこの時期もう一曲、「プラハワルツ」なる曲も収録している。いずれもマイナーともいえる曲にスポットをあて、'77年にデトロイト響に就任して以来オーケストラビルダーとしての手腕を発揮したドラティが、数々の名盤を残したデッカのディスコグラフィーの中にこの「チェコ組曲」を残したのは貴重だ。のだめドラマ同様、ドラティならではの選曲眼だと思う。

ドラティ自身、ドボルザーク作品は好んでいたようだ。この録音後、'83年には以前エントリーしたロイヤル・フィルとの「スラブ舞曲集」の名盤を残しているし、さかのぼること'66年にはニュー・フィルハーモニア管弦楽団との「新世界」の録音も残している(いずれもデッカ)。民族色の濃い作品がお得意なのはジョージ・セルや、フリッツ・ライナーと同様、ハンガリーの血が流れているドラティならではか。
ロイヤル・フィルとの「スラブ舞曲集」とのカップリングではやはり隠れた名曲、「アメリカ組曲」があり、今回の「チェコ組曲」と共に、自分にとって新たな愛聴曲となりそうだ(^^)