画像

名曲は楽器を越えて・・・室内オケの古楽器編モダン楽器編、そしてシンフォニー・オケ編とエントリーしてきたが、最後は弦楽器以外による編曲版をエントリーしたい。現在、SHARPの液晶AQUOSのCMでもボーカルによる「G線上のアリア」がBGMとして使用されているが、いかにこの曲が様々な編曲によって演奏されているかが垣間見える。ここでは金管、木管、鍵盤楽器と3つに分類してみた。今回、取り上げたディスクは計30に及んだが(他に数枚残ったがキリがいいので・・・(^^;)、この曲が改めて愛される理由が分かるような気がしたと共に、自分自身、この名曲に親しむいい機会になった。
(ジャケット画像:左上より時計回り)

<金管楽器編>
~ブラス・アンサンブル版~
○フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル<4:15>
 (1981年9月録音、日本にて収録、キングレコード国内盤)


ブラス・アンサンブルの神様、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの来日4回目の貴重なライヴ録音。「バッハ・フォー・ブラス」と題し、当時このアリア以外に「バディヌリー」「トッカータとフーガ」が共に演奏された。編曲はメンバーのバス・トロンボーン奏者、レイモンド・プレムルーによるもの。チューバのジョン・フレッチャーが奏でる安定したベース音にのって、メンバーがしっとりと歌い上げる。まさに元祖、ブラス・アンサンブルといってよい演奏。
この前年の4月、ジョン・フレッチャーとデニス・ウィック(テナー・トロンボーン)はチェリビダッケ&ロンドン響のメンバーとしても来日していた。

○ジャーマン・ブラス<4:03>
 (2006年頃録音、KREUZ AUDIO輸入盤)


昨年の感動の来日公演の際に購入した一枚。「Meditations in Brass」と題されたアルバムで、瞑想にふけれそうなアダージョなテンポの曲が収録されている。ここではピッコロ・トランペットによる澄み切ったソロによる主旋が美しい。現代の最高峰のブラス・アンサンブルによる癒し系アルバムといえるだろう。

~ブラス・クインテット版~
○カナディアン・ブラス
 (1981年11月録音、セント・ジェームズ大聖堂にて収録、RCA輸入盤)


金管五重奏版によるバッハのゴールドベルク変奏曲で見事な演奏を聴かせてくれたカナディアン・ブラスによる演奏。編曲はゴールドベルクと同様、アーサー・フラッケンポールによるもの。上記の2団体に比べ、パワーの点では劣るが、5人が滑らかなブレスでつなぎ合わせ、見事なハーモニーを聴かせてくれる。

~トランペットアンサンブル+パイプオルガン版~
◎まあくんず
 (1999年8月16-17日録音、所沢ミューズ アークホールにて収録、STUDIO FROHLA国内盤)


以前「クリスマス・オラトリオ」でエントリーしたディスク。神々しい響き、敬虔な雰囲気。その昔、トランペットが神の声に例えられたのが分かるような気がする。ここでは主旋をピッコロ・トランペットとフリューゲルホルンで担当するなど、使い分けも巧みだ。神聖なパイプオルガンによる伴奏もマッチしている。何より、このアンサンブルが日本の団体による演奏である事に誇りを持ちたくなる。たっぷりとした残響の録音も美しい。ブラス版によるマイベスト盤。

~管楽器アンサンブル版~
○東京バッハ・バンド
 (1994年12月17日録音、バッハホール、宮城にて収録、国内盤)


全てが管楽器アレンジによるバッハ演奏というコンセプトのクリスマスアルバム収録曲の一曲。指揮を務める中川氏による編曲でトランペットのB♭管に合わせているため、「G線上のアリア」ならぬ「B♭管上のアリア」とも呼ぶべき作品となっている。ライヴ音源で、会場ノイズが相応に収録されているが、バッハ時代には考えられなかった楽器編成による演奏という点で貴重な試みだ。

<木管楽器編>
~サックス四重奏版~
○アルディ・サクソフォーン・クヮルテット
 (2002年8月録音、横須賀ベイサイドポケットにて録音、マイスターミュージック国内盤)


ハーモニーの美しさにかけては、サックス四重奏による演奏も忘れられない。アルディ・サクソフォーン・クヮルテットは東京芸大の同期生4人によって1990年に結成されたアンサンブル。同期の絆もあってか、ぴったりな息。原曲の二長調をここではト長調によって演奏されている。マイスター・ミュージックレーベルによる高品位な録音はいつもながらに健在。

<鍵盤楽器編>
○ステファン・クレオバリー(パイプ・オルガン)
 (1978年頃録音、ウェストミンスター寺院にて収録、DECCA輸入盤)


ここでパイプ・オルガン版も登場。編曲は演奏者のクレオバリーによるもの。
さすが、バッハの作品だけに、オルガンで演奏されると立派な教会音楽として聴ける。敬虔な祈りの音楽そのもの。クロウベリーはケンブリッジのキングス・カレッジ聖歌隊の指揮者としても活躍の人。ここではロンドンのウェストミンスター寺院のパイプ・オルガンの音色が堪能できる。

○ガブリエラ・モンテーロ(ピアノ)
 (2005年録音、アビーロード・スタジオNo.1にて録音、EMI国内盤)


インプロヴィゼーションによるアリア。雰囲気こそ感じるものの、原曲の形はとどめていない。後でタイトルを見て、ああ、これがアリアの即興曲だったんだ、と気づくほどだ。モンテーロはベネズエラ出身のピアニスト。1995年のショパン国際コンクールで第3位を受賞した実力の持ち主(その時の2位がアレクセイ・スルタノフだった)だが、以前から即興の素養もあった。何より、マルタ・アルリッチによってその才能を見出された事が大きな機運となったようだ。

○ショーンヘルツ&スコット(ピアノ&キーボード)
 (ウィンダムヒルI国内盤)


何と、ウィンダムヒルレーベルにもG線上のアリアが・・・。シンセサイザーも投入された未来系なアリア。エレクトリックな響きだけにさすがにゆったりと落ち着いて聴ける音ではないが、こんな編曲になってもバッハはバッハ。テイストは変わらない。


【こだクラ関連ブログ/G線上のアリア】
『G線上のアリア』ベスト・セレクション30~①室内オケ、魅惑の古楽器編(ディスク5選)
『G線上のアリア』ベスト・セレクション30~②室内オケで巡る世界の旅:モダン楽器編(ディスク10選)
『G線上のアリア』ベスト・セレクション30~③名盤揃いのシンフォニー・オケ編(ディスク6選)