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休日の午後のひととき、コーヒーカップを片手に聴きたくなるアルバムがある。
「PASTIME WITH GOOD COMPANY」というタイトルの付いた「Alpha(アルファ)」レーベル創業5周年(1998~2003)を記念したアルバム。
この記念アルバムには「Alpha(アルファ)」の16曲分のアーティスト達が登場するが、全て未発表音源となっている所に単なるコンピレーションではないこだわりを感じさせる。グスタフ・レオンハルトをはじめ、アルベルティーニの名録音を残したバロック・ヴァイオリン奏者のエレーヌ・シュミット、若手サックス四重奏団のキャチュオール・アバネラ等・・・現代のアーティストの演奏に触れる楽しみだけでなく、曲にも「Alpha(アルファ)」ならではのこだわりと親しみやすさがある。

'96~'97年にかけて7つの国際コンクールで1位を受賞した30代の若手サックス四重奏団、キャチュオール・アバネラはピアソラの「ミケランジェロ'70」を取り上げて完璧なアンサンブル且つスリリングな演奏を繰り広げているし、バロック・チェロを演奏するブリュノ・コクセはアイルランド民謡の「サリー・ガーデンズ」を取り入れた馴染みやすい舞曲風メドレーを展開している。
興味深いのはオランダのピアノ・フォルテ奏者アルテュール・スホーンデルヴルトのベートーヴェン「エリーゼのために」。ここでは現代のピアノではなく、何とドイツ式クラヴィコードで演奏されている!19世紀初頭の雰囲気を味わえるだけではない、新鮮な響きがここにある。

自分を含む現代のモダンオケの音に慣れた人にとって、知られざる古楽器中心で奏でられた音楽というだけで、抵抗を感じるかもしれない。でも先入観なしに聴いてみたい。そしてそんな音楽を奏でているのが若手アーティストである事にも注目してみたい。時代を超えて共感できる何かがここにはある。「Alpha(アルファ)」はそんな彼らの演奏と時代が求める音を見事にマッチさせ、それを鮮度の高い録音で聴き手に応える卓越したレーベルといえるだろう。

「PASTIME WITH GOOD COMPANY」という雰囲気はジャケットにもそのまま表れている。クラシックとは思えない気さくなデザイン。パリのサンジェルマン界隈の食品雑貨店で撮られたアーティストの飾らない普段着の姿。彼らのにこやな微笑の面々の一人に、このレーベルの主催者であるジャン=ポール・コンベや録音エンジニア、ユーグ・デショー(下の画像)も登場している。アーティストに関わる全ての人達が共存する世界がここにはある。

同封の日本語のライナー・ノーツに印象に残る一節があった。「20世紀中半以降の英語圏における“過去の遺産への讃美”的な価値判断にもとづいてCDが売れていく日本と異なり、そこには音楽に対する“今、生きている興行”としての視線と愛情が感じられる」・・・まさに「Alpha(アルファ)」レーベルのポリシーを言い当てている表現だと思う。

そういえば「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」フランスのナントでスタートしたクラシックの興行イベントだった。一部に限られた人の為の音楽でなく、日常生活の一シーンにマッチする音楽。フランスには元々高い文化と革新性のある国だ。今、日本もようやくそういう価値観に気付いてきたのかもしれない。

今週末は土日とも休出・・・仕事の谷間でなく、休みの日に改めてゆっくり聴いてみたい(^^;


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