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「癒し」とか「癒し系」という言葉がよく使われる。今やクラシック音楽は現代人の疲れに効く「癒し系」のサウンドにもなっていると思う。
難しい顔をして聴く必要はない。鑑賞としてだけでなく、シャワーを浴びるような感じで聴く。日中の生活の一シーンだけでなく、時には眠りを誘う就寝時のBGMとしても聴ける。

自分にとってそんなマイ「癒し系」サウンドをフランス発のレーベルで見つけた。アーティスト・演奏・録音と三拍子揃った、フランスのサンジェルマンに拠点をおく、創業10年に満たない「Alpha(アルファ)」という新興レーベルだ。ジャケットのデザイン、そしてデジパック仕様もこのレーベルならではのエスプリが漂ってくるよう。

そこで今宵は女流バイオリニスト、エレーヌ・シュミットによるバロック・バイオリンのサウンドを「Alpha(アルファ)」の超優秀録音で。アルバムはイグナツィオ・アルベルティーニの「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集」より(2001年7月録音、ノートルダム・ド・ボン・セクール病院礼拝堂)。

昨年9月に“発見、クラシック音楽”という特集が組まれていた「エスクァイア」という雑誌の付録に付いていた「Alpha(アルファ)」のCDサンプラーを聴いたのがきっかけ。その中に収録されていた、女流バイオリニスト、エレーヌ・シュミットによるバロック・バイオリンの演奏(アルベルティーニ:ソナタ第5番イ長調)を聴いた時、その澄みきった響きに新鮮な感動をおぼえた。シュミットが奏でるバロック・バイオリンの音色のみずみずしさ。紡ぎ出されたばかりの音が放出され、礼拝堂の空間一杯に響き渡る。

シュミットが演奏しているのは17世紀オーストリアで活躍したアルベルティーニというイタリア出身の作曲家(1644~1685?)の作品。同時代のイタリアの作曲家というと、コレッリやスカルラッティ、ヴィヴァルディらがいるが、同時代に生きた隠れた名作曲家だと思う。

そんな新鮮な感動を与えてくれるもう一つの理由は、「Alpha(アルファ)」の録音の優秀さだった。まるで実際に礼拝堂の中にいるかのような空気感=臨場感。雑誌によれば、このノートルダム・ド・ボン・セクール病院礼拝堂(画像下)の素晴らしい音響に社長が惚れ込んだという。
通常は一般礼拝のある教会の為、録音は深夜に行われるという。 録音はエンジニアのユーグ・デショー氏が一貫して担当。2本の無指向性マイクで録るシンプルなセッティングも貢献しているに違いない。SACDでもDVDオーディオでもなく、通常のCDメディアでここまで高品位な再現ができるレーベルにこれまで出会った事は今までにない。日本でも「マイスター・ミュージック」等、録音へのこだわりを感じさせるレーベルはあるが、アーティスト・演奏面おいてフランスという国の文化レベルの高さ、「Alpha(アルファ)」の資産の高さを感じる。

そんな録音ポリシーを気に入っての事か、チェンバロ界の巨匠、グスタフ・レオンハルトが近年このレーベルで多数の録音を行なっている理由も分かる気がする。
若手アーティストの起用が目立つのもこのレーベルの特徴。例えばフランス出身のサックス四重奏団“キャチュオール・アバネラ”の生み出す素晴らしい音楽はそんな賜物。録音という媒体を通じて自国の若手アーティストを支えていく姿勢も見える素晴らしいレーベルだと思う。今後のリリースも注目していきたい。

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