タワーレコードのジャズコーナーに何気なく飾られていた「女子JAZZスタイルブック」(中央公論新社)という本。最近、ジャズにご無沙汰していた事や、作者のお勧め演奏のCD付ブックだった事もあり、読んでみたくなり、先日購入した。
ジャズというと、どちらかというと男性向けというイメージがあるが、この本は女性の視点で日常生活の様々なシチュエーションを取り込んでいるのが新鮮。今までジャズに取っ付きにくさを感じていた人へのニーズはあると思うし、自分のようにこれまでジャズを感覚的に聴いてきた人にとっても、新たなジャンルを開拓できるという点でもってこいといえる。
タイトルに“女子~”と付いているのも今風だ。昨今、「山ガール」や、「女子会」のようなキーワードに代表されるように、ジャズが女性にとってより身近になった事を感じさせる。著者の島田奈保子氏はそんな女性向けジャズブームの火付け役といえる。
ジャズはクラシックと違ってオリジナルやアレンジ作品が多く、また、プレーヤーの個性が演奏に直結するジャンルだけに、試聴は欠かせない。自分の場合、かつて購入した音源は、ほとんどが店頭での試聴のもの。
しかしながら、試聴して気に入ったものを購入していく内に、好みに偏りが出るのも事実。そんな時、最適なのがこういったガイドブック形式の本。ジャズの歴史と共に名盤を解き明かしてくれるスタイルも初心者には有難いが、自分のような感覚派のリスナーにとっては、シチュエーション別にお勧めを紹介してくれる今回の女子ジャズ本は大変重宝出来そうだ。
本書の中では、以前、本ブログでエントリーしたミシェル・ペトルチアーニ、ビル・エヴァンス、チック・コリア等も取り上げられている。特にミシェル・ペトルチアーニの頁では、アルバム「MUSIC」(1989年発表、ジャケット画像右下)の収録曲「Looking Up」が、「新緑の中をドライブで走りながら~」と紹介されていたが、個人的にも同感で、これからの季節にかけてぴったりなBGMといえる。
また、付録のCD音源(画像右上)は本書で取り上げた中から10曲が収録されていたが、いずれもバラエティに富んで楽しめた。大手ユニバーサルの音源が使用されている点も安心できる。
「ジャズの真髄は、ライヴにある」という著者のコメントも同感。ライヴならではの雰囲気や、ライヴでなければ体感し得えないグルーブ感、その場限りの一期一会のパフォーマンスにも出会えるからだ。
ジャズというジャンルには、時代やプレーヤーと共に、新規開拓されていく楽しみがある。今後も女子ジャズをきっかけに、新たなムーブメントを期待したいものだ。