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吹奏楽っていいな、管楽器っていいなを感じられた一夜だった。「ヴィルトーゾ・コンチェルト」と題された東京佼成ウインドオーケストラによる公演を聴く。彼らの演奏を聴くのは2003年に中野ゼロホールで聴いて以来、約10年ぶり。メンバーの多くは代替わりしているが、それでもトランペットの久保義一氏や奥山泰三氏等、学生時代から知っているメンバーが出演しているのが嬉しい。今回は浜松国際管楽器アカデミー講師との共演との事で興味深い公演となった。
当夜のプログラムは以下の通り。

①序曲「リシルド」(G. パレス)
②フルート小協奏曲(C. シャミナード)
③アルト・サクソフォーン協奏曲(H. トマジ)
④トランペットソナタ(E. エワイゼン)
⑤パガニーニの主題による幻想変奏曲(J. バーンズ)
(アンコール)
○シンフォニエッタNo.2より「パヴァーヌ」(M.グールド)
○行進曲「アンパリト・ロカ」(J.テキシドール/A.ヴィンダー)

大井剛史指揮 東京佼成ウインドオーケストラ
工藤重典(フルート)、ジャン=イヴ・フルモー(サックス)、ジェイムズ・トンプソン(トランペット)


オープニングの①は初耳だが、シンフォニックな響きを兼ね備えた壮麗な曲で、チャイコフスキーや、レスピーギ的な作風を感じる。ブレスを深く取った、たっぷりとしたハーモニーは、まさにウィンド・オケのサウンドの醍醐味で、さすが東京佼成ウィンド!早くもウィンド・オケならではの濃厚なサウンドを堪能できた。大田区アプリコの豊かな残響とマッチしていたことも特筆しておきたい。
二曲目からはソリスト達との共演。まず、フルート界の大御所、工藤重典氏を迎えた演奏。サイトウ・キネン・オケの映像を通じて彼の演奏を聴いた事があるが、今回実演に接する事ができたのは嬉しい。先日N響と共演したエマニュエル・パユとは異なり、息遣いを感じ取る音色だった。フルモーを迎えた③は約20分の大曲。彼のスケール感の大きな演奏は、サックスの母国、フランス伝統の音を感じさせる。
休憩を挟んで、いよいよ今宵のハイライトへ。登場したのは、モントリオール交響楽団アトランタ交響楽団の元トランペット首席を務めたジェームズ・トンプソン。モントリオール響といえば、シャルル・デュトワとの名盤を数多く世に送り出したオケとして有名で、トランペットセクションも巧みだっただけに、以前から気になっていた。
ちょび髭を蓄えたその風貌は、どこなくジョン・ウィリアムズを思わせる。モントリオール響のストレートでどちらかといえばクールな音をイメージしていたが、ステージを通じて聴いた印象は、パンチが効き、かつ甘い音も出るメロウで柔軟性のある音色だった。どことなく、「リヴァーダンス」的な作風を感じさせるエワイゼンの作品も実にユニークだった。
終曲の⑤は今回初めて生演奏で聴いたが、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」を思わせるソリスティック且つシンフォニックな曲。バーンズの代表作の一つだけに、今聴いても色褪せない名曲だと感じた。

なお、アンコールでは3名のソリスト達が東京佼成ウインドの各セクションに入って演奏するという、豪華な共演が実現。トンプソンのジャズ・フィーリングがたっぷり聴けたモートン・グールドの「パヴァーヌ」と、ノリノリな演奏を聴かせてくれた行進曲「アンパリト・ロカ」で、会場は一際盛り上がりを見せた。会場内は吹奏楽をやっている現役学生が多かった事も印象的で、憧れ感が一層増したに違いない。猛暑を吹き飛ばしてくれたコンサートだった。