今宵はDVDで映像もじっくりと。「プロム・アット・ザ・パレス」。 エリザベス女王即位50周年を記念した02年6月開催の野外イベント。自分が大学4年の夏にロンドンに語学ホームステイをしたのが97年だから、その5年後という事になる。オケはBBC交響楽団。プロムといえば、ロンドンっ子にはサマーシーズンに行われるBBC主催のクラシックコンサート、「プロムス」が何といっても有名だ。この一連のプロムスコンサートと、シリーズ最終日に行われる「プロムス・ラストナイト」を生で聴きたいが為にロンドンにホームステイをしに行ったと言っても過言ではない位、当時の自分にとっては憧れだった。そういえばロンドンに到着してロイヤル・アルバートホールで聞いた最初オケがこのBBC交響楽団だった。
このDVDではエリザベス女王やチャールズ皇太子も臨席の元、バッキンガム宮殿の野外広場で開催。とはいいながらも厳かな雰囲気は一切ない。一般市民と調和してコンサートを楽しむ一聴衆者としての女王の姿があるだけだ。盛り上がる選曲が用意されている事もあり、プロムス・ラストナイトさながらのノリノリな聴衆が映し出される。
でももちろん一般のコンサートとは何かが違う。英国海兵隊楽団の演奏で始まるウォルトンの「アニバーサリー・ファンファーレ」、ホルストの「木星」、王宮での選曲に相応しいヘンデルの「王宮の花火の音楽」(ここではなんと実際に本物の花火を打ち上げている!)、第2の国歌ともいえる「威風堂々」など、イギリスのお国柄が見事に反映されている。ゲストもキリ・テ・カナワにロストロポーヴィッチにと、いたって豪華だ。
そして当夜のゲストやオケを見事にまとめあげたのが、指揮者のサー・アンドリュー・デイヴィス。自分がプロムス・ラストナイトで聴いた当時は既に売れっ子になっていた人気指揮者だった。指揮者として一流だけでなく、聴衆と一体となって盛り上がろうとするサービス精神にかけても超一流だ。まさにロンドンっ子が求める要素を全て兼ね備えていた。
最後にオケと聴衆が歌い上げる威風堂々の中間部のテーマ。母国の栄光を共に高らかに歌いげるその感動はいかばかりのものだろう。一般市民が共感と誇りを持って歌える歌がある国というのは羨ましい、と当時も感じたものだ。イギリスの「威風堂々」やアメリカの「星条旗よ永遠なれ」のような曲が日本にもないものだろうか?