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はや2007年も年の瀬。大晦日だけにラストナンバーの作品を…という意味合いも兼ねて、モーツァルトのラストシンフォニー、交響曲第41番「ジュピター」をクラウス・テンシュテット指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の1985年のプロムス・ライヴ(1985年9月13日録音、ロイヤルアルバートホール、ロンドン、BBC LEGENDS輸入盤)で聴く。
1楽章冒頭からどっしりとした風格漂う演奏。まるでベートーヴェンの「英雄」の1楽章のような堂々とした味わい。そのシンフォニックなサウンドには、古楽奏法での演奏や室内オケにはない、モダン・オケならではの力強さがある。

テンシュテットの描く「ジュピター」からは、モーツァルトの生きた宮廷時代の音楽という域を超えた、一人の音楽家の生き様を描いた情熱的な作品として聴こえる。それはまたテンシュテット自身の生き様ともかぶるのかもしれない。テンシュテットはこの年の10月頃に喉頭癌が発見されるが、そんな異変が起こる前もロンドン・フィルとの信頼関係は絶大なもので、ここでもライヴならではの燃焼度を感じ取る事ができる。

それを良く示しているのが終楽章。1楽章がベートーヴェン「英雄」の1楽章なら、終楽章はマーラーの交響曲第5番の終楽章さながらだ。見事な構成のフーガと、トランペットやホルンを強奏させるコーダは、一つの小宇宙のようにも聴こえてくる。
演奏後のロンドンっ子の熱狂的な拍手が演奏の素晴らしさを物語っている。'97年のプロムスで聴いたロイヤルアルバートホールでの感動が蘇ってくるようだ。収録された9月13日といえば、自分が聴いたコリン・デイヴィス&ロンドン響のヴェルディ「レクイエム」とほぼ同シーズンにあたるコンサートだった。

自国のオケやヨーロッパの名演奏家達の貴重なライヴ音源を次々とリリースしているBBC LEGENDSは今や名音源を抱える一大レーベルといっていい。この一年だけでもロジェストヴェンスキーのチャイコフスキーショスタコーヴィッチジュリーニのモーツァルトケンペのドボルザークとエントリーしてきた。ライヴ音源は、演奏家と聴衆との対話を、その会場で生み出される独特の空気と共に感じ取れるから自分は好きだ。
演奏ミス等のキズや聴衆ノイズ、録音技術の制約等のリスクから、ライヴ音源をレコードの質という面から低く捉える評論家もいるが、演奏という行為は本来一度きりの時間から生み出される芸術、という視点で考えれば、自分は決してライヴ音源を否定はしない。
テンシュテットのようなセッション録音を決して多くは残さなかった(というよりは残せなかった)偉大な芸術家の足跡を、ライヴ音源によって感動を当時の聴衆と共に今も共有する事ができるのだから。

激動の一年を振り返り、健康に過ごせた事、音楽が自分の心をいつも癒してくれた事に感謝し、新たな気持で新年を迎えたいと思う。正月は実家で温泉にゆったり浸かって元旦の計を占おう・・・We Wish A Happy New Year!(^^)