パッヘルベルのカノン。バロックの名曲として、古今東西愛聴されている曲だが、それゆえに音源も数多く、その数は図りしれない。以前も「G線上のアリア」等のバロックの名曲をエントリーした事があるが、今回、こだクラ所有のカノンの音源を検索した所、その数は20以上に上った。各々を聴いてみると、同じ旋律ながらもアプローチの違いがある事に改めて気づかされる。その中で今回、自分にとってのマイベスト盤というべきお気に入りのディスクをエントリーしてみたい。(ジャケット画像:左上より時計回り)
【室内オケ版】
■サー・ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団
(1984年11月録音、セント・ジョンズ・チャーチにて収録、PHILIPS海外盤)
よどみなく流れる旋律に浸っていられるカノン。導入部のヴァイオリン・ソロが、まず新鮮。アカデミー室内管のカラーが作品にもマッチしているのだろう、サウンド全体に透明感がある。エンディングが近づくにつれ、ドラマティックに盛り上がるが、自然な高揚感。ヒーリングとしてもマリナー盤はぴったりな一曲となるだろう。
■マックス・ポンマー指揮 ニュー・バッハ・コレギウム・ムジクム・ライプツィヒ
(1982-84年録音、ポール・ゲルハルト教会、ライプツィヒにて収録、CAPRICCIO海外盤)
以前、テレマンの「トランペット協奏曲」でもエントリーしたお気に入りの団体によるもの。ポンマー盤の一番の聴き所はストリングスセクションの繊細かつみずみずしい音色。母体はライプツィヒ・ゲバントハウス管のメンバーだけに、このオケならではのサウンドが色濃く反映してそうだ。冒頭、囁くように旋律が開始され、エンディングに向けてクレッシェンドが築かれていくのが特徴。後述するオルフェウス盤とは対照的。
■オルフェウス室内管弦楽団
(1989年録音、ニューヨーク州立大学にて収録、グラモフォン海外盤)
室内オケの一つの理想となり得るカノン。バランスの取れた絶妙なハーモニー感覚は、指揮者をおかず、奏者との一体感で音楽を創り上げるオルフェウス室内管ならではといえるだろう。演出過剰な要素がない所にも好感が持てる。他の演奏と異なり、エンディングにかけてデクレッシエンドされる展開スタイルもこの盤ならでは。
【オケ版】
■ジョン・ウィリアムズ指揮 ボストン・ポップス・オーケストラ
(1985年6月録音、シンフォニーホール、ボストンにて収録、PHILIPS国内盤)
冒頭、どっしりと鳴るパイプオルガンのサウンドを聴いて、ドイツ系の団体?と想像していたが、ボストン・ポップスの演奏だった事に、まず驚かされた。各旋律楽器が良く歌ったカノンで、フル編成オケならではのサウンドがどっしり鳴っている様は、ゴージャス感がある。聴き方によっては演出過多に感じられなくもないが、それはそれで良しと感じるのは、映画音楽の巨匠のタクトゆえだろうか。以前、「月の光」でエントリーしたアルバム「POPS IN LOVE」に収録。
【古楽器オケ or ピリオドアプローチ】
■アンドリュー・パロット指揮 タヴァナー・プレイヤーズ&タヴァナー・コンソート
(1987年録音、アビーロードスタジオにて収録、EMI国内盤)
■タスマニアン・シンフォニー・チェンバー・プレイヤーズ
(1990年7月録音ガバメント・ハウス・ボールルームにて収録、ABC海外盤)
パロット盤はいわゆるピリオドアプローチの王道を行く演奏。メンバーは少ないものの、個人のソリスティックさが際立っている。テンポ感やアーティキュレーションに華美はなく、極めて中庸に進むといった感じ。
一方のタスマニアン盤はピリオドアプローチの中でのマイベスト盤。聴く度毎にお気に入りとなった。テンポは全体的に早めだが、ふわっと浮くような感覚のサウンドが新鮮。すっと心に入り、涼しさを感じる。ヴァイオリンが聴かせる装飾音も自然だ。