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白鳥の湖」といえばいわずと知れたチャイコフスキーの三大名曲バレエ音楽の一つだが、トランペット吹きにとっては聴き逃せない曲がある。「ナポリの踊り」がそれで、コルネットがリードするサウンドが全体の印象を左右するといっても過言ではない。前半のコルネットならではの素朴な音色と、途中でアクセルをふかしながらスピードを上げて突っ込んでいく後半プレストの輝かしい音色の対比が実にかっこいい曲だ。
最初にこの曲の面白さを教えてくれたのが、ゲオルグ・ショルティ&シカゴ交響楽団盤(ジャケット画像左、1988年10月録音、オーケストラホール、シカゴにて収録、DECCA海外盤)。解説書にクレジットはされていないものの、アドルフ・ハーセス(1921-2013)によるコルネットの名技が聴けるのが最大の聴きどころ。ハーセスのコルネットの素朴な味わいと、後半のオケの豪快な鳴りっぷりが実に爽快。ここでは通常の組曲版ではなく、7曲からなるハイライト版が採用されている。録音も優秀。

そして、決定打はマイケル・ティルソン・トーマス&ロンドン交響楽団版(ジャケット画像右、1990年録音、ワトフォード・タウン・ホールにて収録、ソニー国内盤)。こちらは全曲版による収録で、「ナポリの踊り」は解説書にロッド・フランクス(1956-2014)のソリスト名がきちんとクレジットされているのが嬉しい。トランペット奏者のお手本になるような演奏で、ソロでの存在感のある音色、オケパートと一体となった時のバランスが絶妙だ。
ロッド・フランクスは元々、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルやロンドン・ブラスの出身だけに、このようなソロもお手の物なのだろう。音色はハーセスに比べるとややブリリアントな音色がするので、コルネットではなく、トランペットを用いている可能性もあるが、自分にとって「ナポリの踊り」のマイベスト盤であることには間違いない。